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第54話

渋澤のマッサージの腕はなかなかのものだった。 「どうです?俺結構うまいでしょ」 「うん。気持ちいい」 よく考えればおかしな状況だとわかるはずなのだが、笹本の緊張は徐々に解れ、絶妙な力加減で腰をぐぐっと押されると体からも余計な力が抜けていく。 暫く渋澤の手指に腰回りを解されて、すっかり警戒を解いた笹本はマッサージサロンにでもいるかのようにリラックスしていたその矢先。 「もっと気持ちいいところあるんですよね。してもいい?笹本さん」 「ん……任せる……」 風呂場のぽかぽかとした心地よさ。オイルマッサージとは違う初めてのローションマッサージ。 渋澤にも心を許し、半ばうつらうつらとうたた寝を始めた頃。 尻の狭間を滑った指でするりと撫でられ目が覚めた。 ─え……これは一体……? 渋澤が両手で笹本の尻朶をぎゅっと掴んで揉み拉きながら呟いた。 「柔らかいなぁ」 その手でぐっと尻朶を左右に開かれた。 「し、渋澤っ、何してんだよっ」 「わ、薄い綺麗な色。毛も薄いし。こんなとこまで可愛いんだね笹本さん」 流石にこれはマッサージを逸脱した行為だと気付いた時にはもう遅かった。 尻の狭間にある窄まりをぐにぐにと押され、体を起こそうとしたその瞬間、そこに何かが挿入されたのがわかった。 「え……、わ、やだ……っ、渋澤っ、何っ」 「痛い?」 ─いや、痛くはない。 どこかに潜む冷静な自分が、冷静に自分の体を精査する。 「平気そうだな。ちょっと暴れないで。傷つけたくないから」 「え、え……?何してんだよ、なぁっ」 傷つけたくないから暴れるなとは。動けば傷つく恐れがあるということだろうか。 しかもこの場合、怪我を負う場所は尻の中ということになる。 もしそうなれば日常生活に支障をきたすのではないだろうか。 こんな時だけ冷静に頭が回るなんて。しかし身の安全を守るための本能的思考が働いたのだと思う他ない。

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