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第78話
笹本の拒絶の言葉など渋澤には響いておらず、それどころか笹本の性事情を探る始末。
普通に考えればそんな質問に答える義理などどこにもないし、小泉に聞かせたい話しでもない。
しかし早いピッチで飲み進めたアルコールが笹本の口を軽くする。
「どうも何も……。僕あんまりそういうのやらないし……」
「えっ」
小泉が隣で驚き、渋澤が目の前でにやつき始める。
「それはヤバイっすよ笹本さん。溜まったもんはちゃんと出さないと病気になりますよ」
「ぶっ、ごほっ」
「……病気?」
隣で小泉が噎せる傍ら笹本は真顔で渋澤に顔を向けた。
─嘘だろ。そんな話聞いたことない。
「そうです。出さずに溜まった精子は体内に吸収されて新しい精子がまた作られるわけですが、精子の製造機能はどんどん低下し最終的にはインポに……」
「う、嘘……」
「笹本さんオナニーもせずに今までどうやって生きてきたんですか。その歳でEDとか洒落にならないっすよ。よかったら俺に話してみてください。もしかしたら力になれるかも」
笹本の頭からサーッと血の気が引いていく。
渋澤の話が真実ならば自分はとっくにインポでもおかしくない。
恋人すらいないのだから結婚の予定もある筈ないし子作りなんて夢のまた夢、とんでもない話だけれど、25にして勃起不全なんてあまりにも惨めじゃないか。
いや、まだ勃起するけど。
渋澤が笹本を見てにっこり笑っている。この顔は自分を助けてあげようという顔なのだろうか。
どうすることが正解なのか隣の小泉にも顔を向けた。
噎せ終えて若干涙目の小泉も、笹本と目が合うと、首を縦に振り頷いてみせた。
─渋澤の話は本当なのかもしれない。
笹本は思い切って口を開いた。
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