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第80話
「じゃあこうしましょう。笹本さんが一人でシているところを俺らが見て、医者に相談した方がいいか判断しますよ。診てもらうなら早いに越したことはないっすからね」
「そんな、渋澤と小泉が診る?そんなことで判断ができると……?」
一見渋澤は親身になって笹本の悩みを解決しようとしているように見える。
しかし今までの行いからいまいふち渋澤を信用できない笹本は、助けを求めるように視線を小泉へ移動させた。
「ほんとに?」
「あ、えーと……そうですね。まぁちょっとしたアドバイス程度なら」
笹本の中では経験豊富そうなイメージが小泉に定着していた為、小泉がそう言うならば……と、どこかでそう思ってしまったに違いない。
頭の中を若くしてインポという文字がグルグルと回る。
笹本は小泉と渋澤を交互に見て、「わかった」と頷いた。
美味しそうに見えたおでんは、落ち込む笹本の目にはもう、ただの茶色い煮物にしか見えなかった。
ろくに食べず、ビールだけをたらふく腹に流し込み、目を瞑れば世界がぐらぐらと揺れる程度には酔ってしまった笹本だったが、店を出て左右を渋澤と小泉に支えられながら一緒に歩いているうちに、少しずつクリアになっていく思考に気付かされた。
「いや、でも僕、今のところ病院に行かなきゃならないような症状はないよ!?」
「今のところは、でしょ?今後そういう可能性だってあるわけだから、変な性癖は治しておかないと」
「は!?渋澤に変な性癖とか言われたくないな!」
笹本と渋澤の言い争いを黙って聞いていた小泉が、不機嫌そうに口を開く。
「笹本さんは渋澤さんの変な性癖をどうして知ってるんですか?」
「そりゃ、ヤったからだろ」
渋澤がふんと鼻を鳴らす。
「ほんとに渋澤さんとヤったんですか!笹本さん!」
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