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第85話

─渋澤と小泉の暴挙を許してはならないし、態とらしい演技にだって騙されない! もちろんここで勃ったりしない! 平静を保ち耳から入る音が股間を直撃しないように意識すればするほど、身体にはぎゅっと力が入って両サイドから組まれた腕に逆にしがみつくようにして渋澤と小泉の腕を自分の方へと引き寄せる。 それが彼らにどんな影響をもたらすのかもわからないまま、笹本はぎゅっと目を瞑って理解不能なAVタイムを遣り過ごそうとしていた。 『夕べはうっすい味噌汁作りやがって』 『ごっ、ごめんなさいっ、お義父さんっ、やんっ』 『お前のここからはこんなに出汁が溢れとるというのに、お仕置きじゃあ!』 『あっ、いやっ、くりくりしないでっ、あぁんっ』 誰が聞いても非常に馬鹿々々しい台詞だというのに、笹本は腿をもじもじと擦り合わせる。 台詞と共に聞こえる肉のぶつかる音、くちくちと聞こえる湿った音が、目を瞑っていてもそれに見合う映像を勝手に脳が描きだす。 叱られ、罵倒されながらも、嫁の身体は気持ちいいお仕置きで悦んでいるのだ。 笹本はそんな嫁の姿を想像し、自分がそうされている錯覚を起こしかけていた。 いつもそうだ。気持ちよさそうな女優に感情移入してしまい、結局は女優と同じタイミングで笹本も射精しようとする。 それが笹本のオナニーの実態だった。 「はぁ……めちゃくちゃ可愛いんですけど……笹本さん」 「だろ。どうにかしてでもどうにかしたいと思う俺の気持ち、わかる?」 「はい……わかります」 笹本を間に挟み、渋澤と小泉が会話する。 耳からは淫猥な音が入り込み、その上この状況で何故自分が可愛いと言われているのか訳がわからない。 「そろそろいいだろ」 「えっ、笹本さんがどっちで勃起してるのか俺にはよくわかりませんでした」 「は?僕、勃起なんてしてな……っ!!」 笹本は小泉がまた訳のわからないことを言いだしたと、思わず目を開け股間に目をやる。 紺のスラックスが不自然に盛り上がり、そこには小さな山ができていた。

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