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第97話
「だからぁ女子社員に人気のあるイケメン男性陣よ。この人達が来れば行くって言う子が結構多いらしくて。社員旅行が今年はあるらしいって情報はもう出回ってるから、皆誰が参加するのか気になってるのよぉ。あたし担当じゃないんだけど本社勤務だからよく聞かれるのよねぇ」
「そうなんですか」
ということはそのイケメン社員を集めれば自然と女性陣もついてくるということか。
「あの村上さんすみません、もう一度教えてもらってもいいですか」
「うん、いいわよ」
笹本のデスクに身を乗り出すようにして村上が身体を寄せる。
「っ……」
マスクを着けていてもふわっとフローラルな化粧品の香りが鼻をくすぐり、笹本は少し身を引いて息を止めた。
間近には重たそうな付け睫毛の乗った瞼や天ぷらを食べた直後のようにてかてかとした唇。
やっぱりこの村上は苦手だ。
その後は文書作りとその他雑務の仕事を終え、帰宅の途中、笹本のスマホがスラックスの中で震えた。
確認すると渋澤からのメッセージ。
「下見の件でホテルを予約しました。来週末土日空けておいてください……?はぁっ!?」
笹本は自分が路上にいることも忘れ声を上げた。
─え、マジで何なのアイツ。強引にも程があるだろう。人の都合も聞かないで何考えてんだよ!
予約したということはもう既に済んでいるということ。
自分が行かないと言った場合はどうするつもりなんだろうか。
「……」
笹本は自分に告白した渋澤のことを思い出す。
ほんとにすげぇ好きで……、渋澤はそう言って俯いた。
きっとまた、同じようにしょぼくれた顔をするのだろうか。
─予定なんて特にないし、まぁいいか。
行くけど勝手に決めるなよ。と、笹本は渋澤にメッセージを返した。
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