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第102話
「あ……」
チェックインして荷物を置きに来た時は気にならなかったが、ベッドが2つしかない。
シングルサイズが1つに、セミダブルが1つ。
一応3人寝れないことはないけれど、一度ならず二度までも、いや、三度までも、危険な目に合った身としてはシングルベッドを笹本専用に確保したいところだった。
すると2つのベッドを見比べて固まる笹本に小泉が声を掛けた。
「笹本さんは一人でベッド使ってください。俺は後から無理矢理ついてきたようなもんですし、ソファでも寝れないことはないので。ベッドは笹本さんと渋澤さんで使ってください」
「あっそう」
渋澤はそう言って早速セミダブルのベッドに背中からボスンと音を立てながら落ちて寝転ぶ。
この男は本当に思いやりに欠けている。相手がウマの合わない小泉だからなのかもしれないけれど。
それでももう少し後輩に対する優しさがあってもいいんじゃないかと、笹本は溜息を吐いた。
結局は年長者である自分が折れることでこの場を丸く収めるのが一番いいのではないだろうか。
「……体の大きさからしてソファは僕が使えばいいのかなって思う。そのソファ、フラットに出来るタイプじゃない?でもまぁフラットにならなくても僕そこで寝れるから。それに今日は2人とも僕の仕事の為に沢山歩いたから疲れただろう?2人は身体も大きいし、ちゃんとベッドで身体を伸ばして寝た方が疲れは取れると思うんだ。また月曜からは仕事だしね」
「そっ、それはダメです」
「そうですよ。笹本さんはベッドで寝るべきです」
笹本からの2人へ対するささやかな感謝の気持ちで提案したことだったが、その提案には渋澤も小泉も了承せず、2人は頑なに拒む。
しばらくの押し問答の末、渋澤が体を起こして言った。
「じゃあ3人で寝りゃいいんじゃないですか。小泉の隣は死んでもゴメンだけど、間に笹本さんが入ってくれれば俺は寝れます」
「そうですね。俺もそれが一番いいと思います」
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