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第103話
「ちょっと待って。僕は別にベッドで寝なくても構わないんだけど」
「ソファなんかで眠ったら笹本さんが風邪を引いてしまいます」
「そうですよ。俺達は笹本さんの下見旅行に同行させてもらってる身だし、疲れてるのはみんな一緒っすよ。笹本さんだけソファで寝るなら俺達は床で寝ますよ」
「そ、そんな」
笹本は言葉に詰まる。
これまでのなんやかんやが走馬灯のように笹本の脳裏を流れていく。
またあんなことが起きてしまったら?
起きるとも起きないとも何とも言えないこの状況。
渋澤と小泉が合理的に考えて3人で寝ることを提案したのだというのはよくわかる。
全員が広いベッドで身体を伸ばし暖かい布団に包まって眠れば、疲れもとれるし、風邪を引く心配だってしなくて済むのだ。
この2人を、信じてもいいのだろうか……?
笹本としては別々に寝れればそれで問題はなかった訳だが、自分が2人にベッドを勧めれば2人は床で寝ると言うし、自分がベッドを使えばどちらか片方、恐らく小泉が雑魚寝を強いられるだろう。
それはそれで笹本の良心が痛む。
「で、でも、どうやって3人で?」
中高生みたいな体格の笹本と、長身の成人男性2人。
セミダブルに収容するには大分キャパオーバーしている気がする。
「そんなの簡単です。そのベッド2つをくっつければいいんすよ」
「あぁなるほど」
思わず笹本は手を打った。考えもつかなかった渋澤の発想力には目から鱗である。
「じゃあ笹本さんはそこのサイドボードを動かしてください。小泉はベッドの頭側ずらすの手伝って。俺はこっちを動かすから」
「はいっ」
「うん……」
渋澤の指示通りに動くしかないような空気になり、笹本は言われるがままサイドボードを動かした。小さなタイヤがついていて難なくコロコロと動かせた。
渋澤と小泉はシングルベッドをぐっと押して少しずつもう片方のベッドへと寄せていく。
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