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第105話
「確かにコンビニまた行くのはめんどいけど、俺そこまで疲れてないし買いに行ってきましょうか?」
寝転んでぼうっと天井を見上げる笹本を渋澤が上から覗き込むように見下ろしている。
なんだろう。気のせいだろうか。さっきから渋澤が優しい。
「いや俺が行きますよ。一番年下なんだし笹本さんはもっと後輩こき使ってもいいんですよ」
小泉も負けじとそう言ってにこりと優しい笑みを浮かべている。
笹本は寝そべっていた体をよいしょと起こし、優しくされたことが気恥ずかしく思い渋澤と小泉の視線から逃げるようにして目線を少しだけ下げた。
「あ……2人ともありがとう。じゃあお願いしよっかな。つまみはさっき買ってきたから弁当だけ。いい?」
「もちろんですよ。渋澤さんはどうしますか?」
「俺は麺類。カップ麺じゃなきゃなんでもいいわ」
「了解です」
そうだ。弁当くらいならこの2人に奢れるし、今日のお礼にもならないだろうか。
笹本はそう思い、ジーンズのポケットから二つ折りの財布を取りだした。
小泉が直ぐにでも部屋を出て行きそうだったので、笹本も素早く財布から五千円札をすっと抜き取り小泉に押し付けるように手渡した。
「これ。お釣りはいいから」
「いいんですか」
「うん。これくらいしかできなくて申し訳ないんだけど、今日のお礼。今日は本当に2人ともありがとう」
「うぇーい。笹本さんあざーっす」
プシッと缶を開ける音がしてそちらに顔を向けると渋澤が既に缶ビールを開けて飲み始めていた。
「あ!渋澤さんフライング!ったく仕方のない人ですよね渋澤さんて。ね、笹本さん」
「だね。困った先輩だよねぇ」
小泉は笹本に困ったような笑顔を向けて受け取った五千円札を自分の財布にしまい、部屋を出て行った。
「渋澤、お前ねぇ後輩が買い出し行ってくれるって言ってんだから少しは待てないのかよ」
「喉乾いちゃったんですよ。しょうがないでしょ。……あれ~?笹本さん、足元になんか落ちてますよ。写真?」
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