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第109話
「そんな無防備な恰好しちゃいけません!」
小泉は子供を叱るような口調で笹本の肩にパーカーをそっと被せた。
「え、あ、ごめん」
もしかして、いや、もしかしなくても、自分の裸なんか見たくなかったのだろうと想像した笹本は反射的に謝ってしまった。
そこへ不機嫌丸出しの声で渋澤が参戦する。
「はぁ?男同士で泊りにきてるんだからこんなもんだろうよ。気持ちわりいな小泉」
「……何とでも。……でも渋澤さんがそうやって笹本さんを油断させておいて誑かす魂胆なんて見え見えなんですからね」
「なんだよお前。俺にケンカ売ってんのか?今日は笹本さんの嫌がることはしないって決めてんだ。煽るんじゃねーよ、くそ」
「ちょっと待って2人とも。ケンカはやめよう!ここまできて手伝ってもらえて、僕は助かったし感謝してる。本当に実のある下見旅行だったんだ。これからの仕事もきっと捗ると思うし、僕一人じゃここまで行動できなかったと思うし……だから僕は2人にお礼がしたい!僕にできることがあれば何でも言ってほしい!それで、嫌なことは忘れて飲もう!」
まさかの険悪なムード。それをお引き起こした原因が半裸の自分なのだから何とも情けない。
それ以上に、本当は好きあっているかもしれない2人が目の前でケンカをするところなんて見たくなかった。
「あ!そういえばクローゼットに浴衣があったね!僕に似合いそうって小泉が言ってくれたから、着てみようかな!」
半裸にバスタオルを巻き、パーカーを羽織っている姿は見苦しいだろう。
笹本はクローゼットから浴衣を取り出し2人に背中を向けながらバスタオルを外す。
2人の嫌な雰囲気に圧倒され焦っていたのだろう、下着を穿くのを忘れていた。
しかしそれに気付くこともなく、笹本は2人が見ていることも知らず、白いぷりんとした尻を丸出しにして浴衣に着替えたのである。
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