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第119話
「これです。俺が探してたの」
「そっ、そうなんだ!見つかってよかったね!さ、小泉もお腹空いただろう。早く食べて今日はゆっくり休もう」
小泉は写真から顔を上げて言った。
「この写真、見ましたよね?」
どくんっと笹本の心臓が跳ね上がり、無意識に息を止めた。
何故バレてしまったのだろう。
笹本の頭の中でこれまでの渋澤とのやり取りが、まるで走馬灯のように流れていく。
「見てねぇよ」
どうしよう?と笹本が狼狽える傍ら、渋澤が即答した。
「本当ですか?笹本さん」
「……」
笹本は答えられなかった。
本当は見てしまった。その写真に渋澤が写っていることを知っている。
しかしここで本当のことを伝えていいのだろうか。
何がよくて何がダメなのか、判断ができない。
「見るわけねーだろ。俺はそもそもお前に興味ないし。小泉に興味しんしんなのは本社の女子だけだろ。て言っても女子の皆さんも大変だよな。小泉が笹本さんのこと狙ってるって知ったら卒倒すんじゃねぇか」
渋澤は嫌味を言って笑っている。
小泉の表情は固く、口元はぐっと閉じられていた。
笹本は前々から気になっていたことがあり、小泉に向けて口を開いた。
「小泉……」
「……?」
何ですか?と言うように、小泉の視線だけが笹本に向けられた。
「小泉は、僕のこと……好きなの?」
単純に疑問に思っていたことだった。
はっきりと好意を言葉にする渋澤の思考パターンは読めても、小泉はなぜ自分に気のある振りをするのか、それが振りなのか本気なのかもよくわからず、掴みどころがない。
けれど小泉が渋澤に並ぼうとしているのは見ていればわかることだった。
少し間を空けて、小泉がぽつり、ぽつりと話し出す。
「はじめは……そこまでじゃなかったんですけど、今は違います。知れば知るほど、笹本さんを好きになっていく」
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