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第120話

小泉が真っ直ぐに笹本を見詰める。 嘘や誤魔化しなどないであろう、澄んだ眼差し。 「俺は笹本さんが好きです。いつからなのかはわかりません。笹本さんは俺のことどう思ってるんですか?」 誠実なようでいて実はムッツリスケベで、そのくせ見た目だけは格別で。 長身に広い肩幅、適度な胸の厚み、女性受けする爽やか且つ甘いマスク。 笹本の憧れるルックスを具現化したような小泉に、好きだと言われてじわりと顔が熱を帯びる。 「え……と……」 「わかってます。男は範囲外なんですよね」 「それなんだけど、実はよくわからなくなってしまって……」 「どういうことですか」 「どうって……」 言い淀む笹本を見て、小泉が写真をひらひらとしてみせる。 「わかりました。じゃあこうしましょう。俺はこの写真について、隠していたこと全てをお話します。どうせこの写真、笹本さんも渋澤さんも見たんでしょう?」 どうして気付かれたのだろう?と笹本は渋澤に横目でアイコンタクトを送る。 「笹本さんの演技がクソ過ぎたから気付かれたんでしょーが」 渋澤はそのアイコンタクトに、睥睨するような眼差しで応えた。 事実なだけに反論の余地はない。 「確かにわかりやすい演技でした。そんなところも可愛いです。で、写真のことと引き換えに、笹本さんの本当の気持ちを教えてもらえますか?」 「本当の気持ち……?」 小泉の写真が何なのかは気になるが、自分の気持ちを正直に話す余裕などない。 笹本自身、自分の気持ちがよくわからないのだ。 はっきりしているのは、渋澤と小泉が恋仲だったら……と想像し、ショックを受けたことだけ。 そして恐らく、自分は同性と恋愛ができるということ。 果たしてこのことを正直に打ち明けてもいいのだろうかと笹本が考え込んで俯くと、渋澤が横でチッと舌打ちした。 「お前勝手なこと抜かしてんなよ。その写真俺が写ってんじゃねーか。笹本さんに交換条件出すなんてお門違いもいいところだ。先に俺に説明しろ」

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