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第121話

「それもそうですね。……わかりました」 渋澤からすれば尤もな意見だ。 誰だって他人が自分の写真を持っていたなどとわかれば、気味が悪いし、一体何が目的でそんなものを持ち歩いているのかと思うだろう。 渋澤の言葉には小泉も流石に頷く他なかった。 小泉はすぅっと息を吸い込んで、意を決したように話し始めた。 「この写真、大学生時代のフットサルサークルの皆で撮った写真です。インドアコートの大会の後の打ち上げで撮ったものですけど、渋澤さんは覚えてますか?」 「……大学ん時のフットサルメンバーで撮ったってことはわかるけど、何の大会の後とかは覚えてない」 ぞっとして笹本は肩を震わせた。 小泉はどうして渋澤の学生時代の写真を持ち歩き、しかも渋澤本人が覚えていないのも拘わらずその写真がいつのものかまで把握している。 小泉は一体何者なんだ。 ─まさか……渋澤のストーカー……? 隣を見ると渋澤もまた気味の悪い物でも見るような目で小泉と写真を見比べていた。 「渋澤さんが覚えてなくても、俺に残されたたった一枚の大切な写真です」 「……」 「彼、覚えてます?」 小泉はそう言って、前後二列で写真に写る前方の地味で小柄な男子学生の一人を指さした。 「え?……あぁ、覚えてる。鈴木だろ」 「そう。彼は鈴木先輩。俺の好きな人でした」 「え?じゃあそこに写ってる俺は関係ないってことか?」 「関係なくもありません」 「はぁ!?」 段々訳がわからなくなってきた。 写真に写る地味で小柄な男子学生が小泉のかつての好きだった人物。そしてその後ろでピースしているのが渋澤。小泉とこの二人の関係がよくわからない。 「そして俺は、小泉です」 「……は!?知ってるけど。お前の名前は小泉だよな」 「よく見てください。渋澤さんの隣に写っているの、俺ですよ」

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