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第123話
笹本の構わないときっぱり言い切った声に渋澤はばつが悪そうにして頭に手をやる。
「渋澤さんいいですか」
小泉がそう確認すると、渋澤は「勝手にしろ」と言い捨てるように返事した。
小泉は話を続ける。
「俺は鈴木さんのことが好きでした。ずっと思いを寄せてアプローチし続けてきた鈴木さんを、途中で渋澤さんに横取りされたんです」
「は?横取りってお前、あの時鈴木は誰とも付き合ってなかったぞ。それに向こうから誘ってきたし、関係は一度きりだし、小泉が鈴木のことを好きだったなんて知らなかった。今初めて聞いたわ。まさかそれを逆恨みして復讐しようとでもしてるのか?今度は俺が好きな笹本さんを寝取ってやろうとでも?」
「まさか。渋澤さんみたいに下衆な真似はしません。……俺は許せなかったんです。横恋慕した渋澤さんも、俺の気持ちを無下にした鈴木さんも。……それから鈴木さんから見た魅力のない不甲斐ない自分自身も。だから今度こそは正攻法でいこうと思って、まずは顔を変えました。一重で重たそうだった瞼を二重にすっきり整えて、鼻筋にはシリコンのプロテーゼを入れました。弄ったのはそれだけです。あとは美容室で髪型を今時に変えてみたり、流行りの服を着てみたり。外見から変えていきました」
鈴木という人物を巡り、渋澤と小泉が争い対立していた過去があったのかと思っていたが、どうやら違うらしい。
小泉が抱いているのは一方的な渋澤への敵対心。
それも相当拗らせているように思える。
「それで?俺と同じ会社に就職した理由は?」
渋澤の声が今日一番の不機嫌さを表した。
「渋澤さんに勝つためです。俺が渋澤さんに負けた理由が全くわからないんです。だから見た目を変えてみた。同じ会社に就職するのはそう難しいことではありませんでした。ただ、店に配属されたらどうしようという懸念はありましたが、運良く本社勤務の人事部に配属され、それが俺の背中を後押ししました」
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