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第124話
「俺に勝つ……?」
どこをどう見ても小泉が渋澤に劣っているなど、誰も思わないだろう。
小泉は一体何に拘っているのだろうか。
鈴木さんを取られてしまったことが相当ネックになっているのだとしたら、目的は……。
─僕……?
「そうです。真っ向勝負で渋澤さんが想いを寄せている笹本さんを手に入れようと考えました。印象良く持たれる外見を手に入れて、あとは自分の中身で渋澤さんの好きな人を俺に振り向かせようと思いました。でも、渋澤さんは思った以上に横暴でめちゃくちゃで、見ていて笹本さんが可哀想になり、俺の気持ちが変わっていきました。途中からは笹本さんを振り向かせることより守ってあげなくちゃって。……この写真は大好きだった鈴木さんが写っている1枚であり、俺が追い越すべき渋澤さんが写っている1枚でもあり、そして情けない過去の自分を戒めるための1枚なんです」
「うっわ気持ち悪……。鈴木の話も訳わかんねえけど、俺に対するライバル心も、笹本さんにちょっかいかけるやり方も、どこをどうとったらそれが正攻法と言えんだよ。もうはっきり言って、こんな話誰が聞いてもドン引きだよ、ドン引き」
確かに渋澤の言うとおりかもしれない。
私怨を晴らすために外見を変え、自分を振り向かせるよう仕向けるなんて、歪んでいるとしか思えない。
でも笹本は、そうまでして生まれ変わろうとしている小泉を責める気にはなれなかった。
理解できる部分もあるから。
「それで……小泉はこれからどうしたいんだ」
「渋澤さんからあなたを奪います」
「奪うも何も僕は渋澤のものじゃない。それに小泉は僕のことを好きなわけじゃないんだろう? だったら僕を奪うとか、そんなことしなくても勝負の方法は他にいくらでもあるじゃないか」
「それじゃ駄目なんです」
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