128 / 206
第128話
「何で知ってるんだ……?僕、ずっと隠してきたのに」
渋澤に指摘された青い顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
それを見ている渋澤と小泉が内心きゅんとときめいていることなど、笹本が知る由もなかった。
「そんなことより笹本さん的には俺と小泉、どっちが見込みありますかね?」
「……見込み?」
全てを出し切った笹本の空っぽになった頭では、渋澤の言葉が理解できない。
笹本は首をちょんと傾げてみせる。
「俺もそれは気になります」
「俺は前々から笹本さんに告り続けてるし、小泉の告白も聞いた。その上で笹本さんが男もいけるって俺たちに話したってことは、俺たちにも希望があると解釈したんですけど」
渋澤の言葉で止まっていた笹本の思考が物凄い勢いで回り始める。
渋澤と小泉、どちらと付き合えるか教えろと言われているのだと、やっと理解できた。
「え?あ……、いやいや、そこまでは流石に考えてないよ!」
「へぇ」と渋澤は呆れた顔をする。
「まぁいいか。あとは笹本さんの体にでも聞いてみよ」
「渋澤さん、また!渋澤さんのそれがダメなんですよ!」
「うるせーな。笹本さんは体から入るタイプなんだよ」
「え……、そんなに笹本さんの体はエロいんですか」
「あぁ。恋愛経験ない筈なのに、ちょっと弄っただけで前も後ろもトロトロだよ」
「ええっ!だ、だから、そういうのは、お互いの同意が必要なんです!!まさか無理やりやったんじゃないですよね!?」
「おいっ!ばか渋澤!何嘘言ってんだよ!怒るぞ!!」
「もう怒ってんじゃん」
渋澤がバカを言って、この場の空気がなんとなく元に戻った気がした。
小泉の隠し持っていた秘密は、あまりに大きく、ずっと恨まれていた渋澤はどんな思いで小泉の告白を聞いていたのだろうか。
個人的な恨みで写真を持ち歩かれていたというだけでも気味が悪いのに、渋澤が気にしている様子はない。
きっと写真の鈴木さんは、渋澤の楽観的で寛容な部分に惹かれたのではないかと思った。
ともだちにシェアしよう!