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第130話

「危ないっ」 慌てて笹本と渋澤が同時に手を差し伸べた。 ずんっと両手に小泉の重みを感じて、何が起きたのかと慌てて小泉を確認する。 「……寝てる?」 聞こえるのは、すぅすぅと規則正しい寝息の音。 「そうっすね。何だよこいつ、これっぽっちで酔いつぶれたのかよ」 赤くなる程飲んで酔い潰れる小泉の姿を見たのは初めてだった。 恐らく緊張から解放され、飲み過ぎてしまったのだろう。 「ベッドに運ぼう」 「えー。こんな奴、その変転がしといて大丈夫ですって」 「だめだってば」 渋澤は眉根を寄せてさも嫌そうな顔をしてみせる。 けれど笹本にはわかっていた。 口では意地悪を言うけれど、渋澤がそこまで非情でも薄情でもないということを。 笹本と渋澤は小泉を両脇からそれぞれ支えベッドへと運んだ。 小泉は一行に起きる様子もなく、寝ぼけてベッドから落下し怪我をされても困るので、ベッドの壁際へと転がした。 「すげぇ重いなこいつ……」 「筋肉質なんじゃないかな。僕からすれば羨ましいけど」 「……笹本さんがでかくてごつかったら、なんか嫌ですね」 「なっ、どういう意味!どうせまた失礼なこと考えて……んむっ、」 笹本が渋澤に反論しようとむすっとした顔を渋澤に向けたところで腕を引かれ、気付けば腕を取られたまま腰を抱かれて笹本は渋澤とキスをしていた。 「ん~~っ、んふっ、んんっ」 やめろと顔を横に振って抵抗しても、渋澤の力は全然緩まないし、唇も離れない。 「んっ……ん……」 少し開いていた唇の隙間から渋澤の舌がぬるりと笹本の口内へ侵入し、中の粘膜を擦られる。 歯列を、歯茎を、頬の裏、上顎、舌の裏までも。 笹本は途中で抵抗をやめた。 ─……嫌じゃない。 正直驚いただけで嫌悪は感じず、寧ろ渋澤の気持ちがダイレクトに伝わってくるようで、酒が入っているせいもあってなのか、笹本はうっとりとしながら瞼を閉じた。

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