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凡庸のロマンス
雲ひとつない澄み渡る青空に太陽がギラギラと眩しく輝いている。
いつしか梅雨が明け、ミンミン、ジリジリと忙しなく蝉が鳴く季節となった。
笹本は真昼の太陽を避ける為、大きなカシの木のしたに設置された公園のベンチで昼食を取っていた。
それでも木々に揺れる葉の隙間を縫って、太陽光が降り注ぐ。
いくら日陰とはいえ、7月も中旬だ。暑い。
外で昼食を食べ、のんびり昼休みを過ごすのもそろそろ限界だろう。
「あちぃ……」
キンキンに冷えたペットボトルのお茶は既に生温く、笹本は仕方なくそれを口に含んでワイシャツのボタンを1つ外す。
朝から1つ外していたので、今はボタン2つ分の開襟だ。
人目につかない公園ならではの息抜き。
社内でクールビズを取り入れているとはいえ、流石に2つもボタンを外せば煩い上司に何か言われるだろうから、普段社内で外すボタンは1つに留めているのだ。
笹本独自のリラックス法が、この暑さで封じられようとしていた。
─公園がダメなら、やっぱ社内で昼飯食べるしかないよなぁ。
そうなるとボタンも2つ外せないし、だらりと手脚を投げ出してベンチに座ることもできない。
どうせ毎年そうしている。それもまた仕方ない。
そんなことを考えながら、たまごのサンドイッチを食べ終えて、手についた食パンのクズをパンパンと手を合わせ叩いて地面に落とした。
社内旅行の下見と称した渋澤と小泉との旅行の後、笹本は結果を上司に報告した。
しかし上司である総務部長からは、「あぁそう、ご苦労さん」の一言で片付けられてしまった。
しかも社員旅行の宿泊先は当初からほぼ決定していたそうで、各ブランド、各部署それぞれ別々のところへ宿泊することが決まっていたらしい。
笹本の心中はそれを先に言ってくれよという恨み言でいっぱいになった。
結局その後、笹本は部長の指示通りに文書を作り社内通達を出した。
笹本のしたことは丸っきりの無駄足だったのだ。
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