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第148話
これまでも渋澤には口八丁手八丁で自分の体をいいように扱われてきた自覚がある。
けれどその手は、今よりずっと優しかった。
笹本の記憶から呼び起こされるのは、渋澤の優しく笹本を抱き寄せる手、優しい声。労わるように優しく触れられたことばかり。
悪人顔なのに瞳の奥には優しい光が灯っているのも知っている。
笹本の涙は止まらなかった。
性器を握って快感を追いながら擦るけれど、擦れば擦るほど萎えていくような気がした。
渋澤と小泉はスラックスの前を開けただけで、笹本だけが裸なのも気になった。
足首に引っ掛かっているのはパンツと靴下だけだ。
抜き合いと言いながら、自分が満足すればそれで終わりだなんて。
─これってイジメじゃないのか。
笹本は腰だけ高く上げて四つん這いのまま片手で体を支え、もう片方の手で自慰をする。
渋澤のを銜えた時からずっと同じ態勢をしていたので、膝は痛いし、腿も攣りそうだった。
「ふぅっ……っ、んっ、ん」
解ったのは、この行為が無意味だったということだけだ。
「笹本さん、もしかしてイけないんですか?俺手伝いましょうか」
「やっ、やだっ……」
黙って笹本を見ていた渋澤達だったが笹本の異変に漸く気付いた。
笹本の涙は止まらず、擦り続けているそこは張り詰めたままで達する気配が感じられない。
「笹本さん楽しい?」
渋澤が言った。
楽しいわけがない。こんなに辛く惨めなことが、楽しいはずがないではないか。
笹本は首を横にふるっと振って答えた。
「俺も全然楽しくないです。これに懲りて3人でしようだなんて言うのはやめてもらいたいんですけど」
言う通りにすれば甘くて優しい行為に及んでくれるのだろうか。
自分が望んでるのはそれなのだ。
笹本は何度も頷いた。
「や、やめるって……、言ったら、やさしく触って……くれる?」
少しの沈黙が訪れて。
「……っ、だあーっ、もう、あーーあーーーーっ!!」
渋澤が頭を掻きむしりながら雄叫びを上げた。
「……え、しぶさわ?」
「渋澤さん……?」
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