149 / 206

第149話

渋澤は小泉の鞄を床から拾い上げて、小泉にぐいぐいと押し付けた。 「今日はもうお前帰れ!この後俺の家には宇宙人が襲来する予定なんだよ!死にたくないなら今すぐ帰れ!」 「え、ええっ、ちょ、ちょっと待って!意味がわかりません!ていうか笹本さんは!?」 「うるせー。俺と笹本さんは宇宙人襲来から地球を守る地球防衛軍に所属してるんだ。そしてここは秘密基地!部外者のお前は今すぐ立ち去れ!」 「何なんですか!そのトンデモ設定!?」 「知るか!」 渋澤が小泉の背中を強引に押して玄関先まで連れて行き、小泉の靴を拾い上げてそれを抱えている鞄の隙間に差し込んだ。 渋澤はそのままドアを開け、小泉の背中をドンと蹴とばし玄関の外へと押しやった。 「いったぁ!蹴飛ばすなんてひどいです!それにあんな状態の笹本さん放置して帰れるわけないですよ!ちょっと渋澤さ」 バタンッと勢いよく閉められたドアの音で、小泉の声が途切れた。 渋澤が溜息を吐きながら閉まったドアの方を向いたままくるりと首を回した。 「はーっ、やっと邪魔者追い払いましたよ。そもそもあんたが3人でしようだなんて言うからこんなことになるんですよ。あいつ何の遠慮もなしに笹本さんの素股味わいやがって!あいつ絶対ぇ変な性癖持ってますよ!絶対気ぃ許しちゃダメっすからね。俺より危ねぇわ……」 「っふ、ふはっ、はははっ……なんだよ、地球防衛軍って……、ばかみたい」 何故だかほっとして、笹本の涙は渋澤のとった行動に驚いてぴたりと止まり、代りに漏れたのは笑いだった。 ほっとして、可笑しくて、嬉しくて。 追い返す言い訳が大いに渋澤らしくて笑える。 「う……、確かにバカみたいでしたけど、元はと言えば笹本さんが……。俺、これでも相当怒ってんですけどね」 脚を折ったまま、床にペタンと座り込んだ笹本の傍へ渋澤がやってきて、目線を合わせるようにしゃがみ込む。 「小泉に笹本さんのエロイところを見せたいなんて思ったこともないし、共有したいだなんて思ったこともない。俺は散々笹本さんに好きだって言い続けてきたけど、まだ伝わってないんですか」

ともだちにシェアしよう!