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第150話

"ど"がつくくらいストレートの直球で、何度も気持ちをぶつけられてきたのだから、痛いほど渋澤の気持ちは伝わっている。 想われることの安心感、心地好さも覚えた。 嘘をついても仕方ない。 笹本は静かに首を横に振る。 「じゃあ笹本さんは?笹本さんの気持ちは?俺のこと、ほんの少しでも好きになってくれました?」 「わからない……。けど、こういうことをしたかったのは、渋澤とだけ。……あの場で変に取り繕ってしまったのは悪かったと思ってる。……僕、どうしても渋澤の顔がもう一度見たくなって焼き肉屋の前まで戻ったんだ」 「頑固だなぁ。そういうのを好きって言いません?」 「わ、わからないっ」 悪魔みたいな悪人顔の同性に、恋をする日がくるなど誰が思うだろうか。 これは恋なのか? 首を横に振った後黙ってしまった笹本の小さな顎を、渋澤の手がくいっと掬う。 「え……」 呆気に取られて呆然と渋澤の顔をただ眺めていた。 その悪い顔がどんどん近付いてくるので、笹本はぎゅっと目を閉じた。 訪れたのは、ふにゅ、と唇が柔らかいもので押される感触。 キスだった。 笹本を慰めるように、ふわふわとした軽いタッチのキスを、角度を変えて3回された。 「……さっきはごめん。乱暴に扱って」 渋澤はそう謝罪をし、笹本の瞼にも口付ける。 「いいよ……もう。僕にも非があったんだし……」 「でも今になって可哀想なことしたなって、反省してます」 「うん」 笹本は目を開けて渋澤に視線を合わせた。 なんだかこの一連の流れに既視感を覚える。 ─いや、まさか。渋澤がこんなにしょぼんとしてるのも珍しいし。 口の中にあんな凶器を突っ込んで突き上げるという血も涙もない悪魔的な行為をされたけれど、今回ばかりは本当に反省しているに違いないと笹本は自分自身に言い聞かせた。 笹本の目の前では渋澤は笹本の顔や胸、腹、腹よりもっと下へと視線を行き来させている。 「笹本さん、ベッド行く?」

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