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第153話

「ワイシャツは俺の使ってください。一応これでもちゃんと洗濯してますから。アイロンかけてないけど……。あと歯ブラシとパンツは新品あるからそれ使って」 「……うん」 バスが終わってしまったけれど帰る気になれば徒歩で40~50分も歩けば自宅に着くだろう。 でも体は重いし、渋澤と離れるのはどことなく寂しくて帰る気になれなかった。 「うち泊まるの2回目ですね」 「そういえばそうだね」 1回目は不本意ながら酔い潰れて介抱してもらった流れがあったけれど、今回は違う。 自分の意志だ。 「笹本さん初めて泊まりに来た恋人みたいだな」 「は、はぁっ!?なっ、何言ってんだよ!そんなんじゃ、ないしっ」 「ぶはっ、テンパり過ぎ」 自分が渋澤の恋人だなんて。考えただけでまた首から上がぼっと熱くなる。 ─……恋人になれるのかな。 笹本が胸の奥でほんの少しだけ思ったことは秘密だ。 笹本はその晩、渋澤から新品のパンツをもらって渋澤のTシャツを借り、渋澤のベッドでぎゅうぎゅうに抱きしめられながら眠りに落ちた。 ふわふわとしていてほろりと甘い、綿菓子を食べているような夢を見た気がする。

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