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脇役的プリンシパル

昼休み、笹本は昼食を求め社を出てコンビニへと向かっていた。 ジリジリと身を焦がすような太陽が燃え盛り、笹本の白い肌を焼く。ひりひりと腕が痛みを感じるくらいだ。 あちらこちらからは狂ったように鳴く蝉の声。頻りに大きな音で鳴き続け子孫繁栄の為の大合唱を繰り返す。 車道に目をやれば、アスファルトからはもやもやとしたゆらめきが立ち昇る。陽炎だ。 「殺人的な暑さだなー……」 思わず独り言が漏れる。 夏真っ盛りの8月。夏季長期休暇中のお局美咲の仕事を引き継いだ笹本は、猫の手も借りたいほど忙しい毎日を送っていた。 通常業務に加え社員旅行に関する手続き諸々と、美咲の通常業務もこなす。 美咲は消耗品の管理や郵便物などの仕分け、各取引先の契約書管理など、細々とした仕事を抱えている。 通常業務にこれらが加わると非常に忙しく、とても定時で上がれるような状態ではなかった。 ─これだけ僕に仕事を押し付けて休んでるんだから、何かお土産でも買ってきてくれるかな。 美咲がどこへ旅行に行ったのかは知らないが、夏季休暇は全員が取らなくてはならない休暇だ。その間仕事の穴埋めをするのは当たり前なので、この忙しさも仕方のないことだった。 しかしテンションはどうしても下がってしまう。 笹本はコンビニへ入りまずおにぎりを眺めた。 鮭かたらこか。少し悩んで両方手に取る。すると後ろから声をかけられた。 「まさか昼飯それだけっすか」 笹本の後ろにいたのは渋澤だった。 笹本はその声の主が渋澤とわかっているのに、慌てたように振り向く。 渋澤は渋澤。どこからどう見てもあの渋澤なのに、何故かキラキラと輝いて見えるのだ。 以前小泉に感じていたキラキラオーラが渋澤に移ったようだった。

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