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第155話
「お、お疲れ、さま」
笹本は勢いよく振り返った衝撃で眼鏡がずり落ちていることにも気付かず、ぽーっとした目で渋澤を見詰める。
その横を渋澤の細いながらも筋肉質な腕が棚のおにぎりへと伸びて行く。
「もう少し食った方がいいですよ笹本さん」
そう言う渋澤は、反対の手に青年マンガ誌とカップラーメンを抱えていた。
「渋澤だって、カップ麺ばかり……。サラダとか食べないの」
「辛い麺が食いたい気分なんですよねー。あ、そういえば、前に俺んち来た時にもカップ麺がどうのって同じようなこと言って、俺が聞いたら飯作りにきてくれるって言いましたよね。来てくださいよ」
「そうだっけ?……そう。そんな約束したのなら行かないとだよね」
「今度は小泉は誘いませんよ」
「あ……、後ろ」
渋澤がそこまで言うと渋澤の背後からゆらりと小泉が姿を現した。
「んだよ小泉かよ。普通に出て来いよ気持ち悪いな」
「ひどい。俺を仲間外れにしないでくださいよぉ。何ですか、宅飲みの約束ですか」
「まぁそんなとこ」
「お前はお呼びじゃねーんだよ。俺は今笹本さんと話してるんだがな」
「まぁそう言わずに。俺お2人に相談したいことがあって」
小泉が目線を下げて困ったように言うその様子を見て、笹本と渋澤は顔を見合わせた。
笹本が抜き合いをしたいと自爆行為に走ってからその翌日、笹本は小泉にこういう友達付き合いはできないことはっきり伝えた
小泉は寂しそうに「わかりました」と言って微笑んで、それきり小泉から恋愛的なアプローチは一切受けていない。
そんなことがあったにも拘わらず自分や渋澤に相談があると言うことはきっと仕事のことだろうか。
「後輩が困ってるんだよ渋澤。話くらい聞いてやれよ」
笹本が頼み込むようにそう言うと、渋澤は鬼の形相でチッと舌打ちした。
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