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第156話

「渋澤のそんな顔、もう別に怖くないよ」 「はは……」 渋澤の怖い顔と態度は今に始まったことではないので、笹本も小泉も耐性ありだ。 渋澤は再び舌打ちして「仕方ねぇな」と呟いた。 「で、どういった内容?」 「それが……」 笹本は手におにぎりを抱えたまま小泉に尋ねたが小泉からはっきりと内容を聞くことはできなかった。 コンビニの中も、会社からコンビニまでの道のりも、社内も、全ての場所で話すことを小泉は拒否したのだ。 どうやら社内の人間に聞かれてはまずいらしい。 仕方がないので仕事終わりにこの3人でまたしても渋澤の住むアパートへ集まることとなった。 残業を終えた笹本と渋澤がアパートへ向かうとそこで小泉が待っていた。 「お疲れ様です」 「犬かよ。どんだけ待ってんだ」 「渋澤!そういう言い方はないだろ。もしかしたら結構深刻な相談事かもしれないぞ」 「うざ……」 残業が終わるまで待っていたということは、相当重い悩みなのだろうか。 小泉は笹本と渋澤のやり取りを見て苦笑いを浮かべた。 「お邪魔します」 相変わらず雑多に散らかった渋澤の部屋で、男3人が床に座る。 むさくるしいことこの上ないのだが、笹本はふと、この2人としてしまった厭らしい行為を思い出し、今日は絶対そんなんじゃないんだから!と、それを慌てて掻き消した。 「で?」 渋澤は不機嫌丸出しの声で缶ビールを口に運ぶ。 「なんでそんなに冷たいんですか。もう少し先輩としての聞き方ってものがありますよね。大体俺一人の問題じゃないんですからね!渋澤さんと笹本さんにも大いに関係があるんですから……」 「え……すごく気になるんだけど、どういうこと?」 笹本が膝を床についたまま身を乗り出して、立膝をついて座っている小泉をじっと見詰める。

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