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第159話
「なんでよりによってソレなんだよ……」
「うーーーん……」
何か他の手はないものか案を捻りだそうと、3人とも一様に腕を組んで考え込んでいる。
「最近人気のワンコスターとかは?変顔で縄跳びするやつ」
笹本が提案した。渋澤も小泉も運動神経が良さそうだし縄跳びくらいならお手の物じゃないだろうか。
「何言ってんすか。普通に前飛びぐらいしかできねぇし。そんなの見ても全然面白くないです」
「笹本さんもしかして縄跳び得意なんですか?」
「えっ、僕はどっちかというと運動音痴なので飛べないかな……へへ」
「んじゃ何で提案したんすかー。あ、笹本さんが体操着でブルマ穿くならそっちでもいいですけど?」
「はっ……!俺もそれ見たいです!」
渋澤のセクハラ的な提案に小泉が食い付いた。この流れはまずい。
「……やっぱりワンコスターはやめようか」
「えー」
「えーじゃないだろ!僕ブルマなんか穿かないからな!」
部屋が再びしんと静まり返った。
人事部長は恐らく小泉のスーツの下を知っている。いい体をしていると思うから裸芸などやれと言うのだ。
だとしたら自分は半歩後ろで小泉と渋澤の引き立て役をすればいい。
それにこうして小泉が切羽詰まって自分達に話すということは、裸芸へのプレッシャーを上司からかけられている証拠だろう。
困っている後輩を見捨てることもできないし、その余興で宴会が盛り上がれば自分も含め小泉と渋澤の株も上がるというもの。
「わかった。僕はヒロシ100パーセント協力するよ」
しんとした沈黙を破ったのは笹本だ。
小泉がパッと顔を上げる。嬉しそうなのがよくわかる明るい表情だった。
一先輩として少しでも小泉の不安が解消されたらいいなと思う。
直後渋澤も「えーマジで?」とぎゅっと眉間に皺を寄せるも「わかったよ。やりゃいいんだろ」とムスッとしながら応えた。
斯くしてこの3人は社員旅行に向けてヒロシ100パーセントの芸を練習することとなったのである。
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