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第165話

すると渋澤がなんとも言えない表情の笹本を見てふっと笑う。 「大丈夫っすよ。みんな小泉しか見ないから」 「えっ」 すると小泉がぐりんと勢いよく渋澤に顔を向けた。 「まさか俺だけにこの裸芸をやらせようとしてませんよね!?」 「それはねぇだろ。上司命令だから一応やるけど本当はみんな小泉を見たいんだって。言わば俺達はお前の引き立て役だな」 「えー……それってどうなんですか……それはそれで複雑な心境です」 唇をとがらせる小泉の横で笹本は気の抜けていく思いで渋澤を見詰めた。 ─あぁそうか。 笹本の不安は渋澤の言葉で一気に霧散した。 自分も渋澤も元々そういう部類の人間で、引き立て役は得意中の得意だった。 渋澤と小泉にちやほやされたせいか、笹本は自分がモブ属性だということをすっかり忘れてしまっていた。 主役は小泉であり自分は影で小泉を支える役。それなら頑張れる。 「2人の先輩なのに往生際悪くてごめん。ちゃんとやるよ」 気を取り直した笹本が困ったような顔でふにゃりと笑い、脱ぎ掛けていたポロシャツのボタンを全部外し終え、潔くそれをばっと脱ぎ捨てた。ジーンズも下着も脱いで小泉から手渡されたベージュのTバックを身に着ける。 下着の中に大切な部分がうまく収まるように作られていて、横からのはみ出しなど気になるところは特になかった。 下半身のチェックをする笹本を渋澤と小泉がじっと凝視する。 「腰のところとか少しくびれててエロいんですよね……」 「あぁ。そんであの丸い尻だろ。あれで裸芸なんかやったら俺らのライバル増えるんじゃねぇか」 「……俺もそう思います」 「だったらお前がみんなの注目を独占して笹本さんに視線が集まらないように頑張れよ」 「っ、わかりました……!」 渋澤が小泉の背中をばちーんと叩く。 その音で笹本がそちらへ目を向けたが、喧嘩をしているような険悪な雰囲気は全くない。 笹本はただ単純に渋澤達も気合いが入っているんだなと、自分も気合いを入れるべくぷにっとした腹に力を籠めた。

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