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第166話
その後それぞれが練習の成果を披露しあった。
小泉はにこにことした笑顔とがっしりとした上半身で注目を上の方に集め、お盆返しも抜かりなく確実にやり抜いた。あまりに仕上がりがキレイで文句のつけどころがない。
「よっ、ほっ、もう一回いきますよ!」
「おお。なかなか器用だな」
「すごい!全然股間が見えない……!」
笹本は驚きを隠せなかった。まるで本職の芸人のように1ミリたりとも局所を見せずにお盆が返せるのかと甚く感心した。
「そりゃそうですよ。必死で練習しましたから。まさか社内の人たちに股間を見せるわけにはいかないですしね。これでお盆に花火の絵でも描いてひっくり返した時に花火が上がるようにしたらもっといいかなぁと思ったんですけど、余計股間に注目集めそうなのでやめておいた方がいいですかね……」
「いやいや、そこまで完璧にひっくり返せるのなら股間に注目を集めても大丈夫じゃないかな」
「確かに。むしろもっと注目を集めてほしい」
渋澤が意味ありげにそう言うと小泉がはっとした顔で「わかりました」と頷いた。
次に渋澤がお盆返しを披露する。
渋澤は手首の返しが強く、手首に力が入っているのがわかるのだが、失敗しそうでしないところが面白かった。気合いを入れる為かお盆を返す直前に「はっ!」と声を発するのも面白く、真面目に取り組む渋澤を前に不謹慎にも笑ってしまった。
「ふっ、ふふっ」
「渋澤さんもなかなかやりますね。あの強面であの演技されたら笑っちゃいます」
笹本だけでなく小泉までくすくすと笑っている。これは本番も期待できそうだ。
「じゃ、次笹本さん」
笹本がお盆を持って二人の前に立つと、渋澤と小泉は腰を下ろした。
今まで立ち見だったのにどうしてこの時だけ2人が座ったのか、この時は疑問にも思わなかったのだが。
「笹本さん結局その小さいお盆でやるんすか」
「うん。僕的にはこの大きさが返しやすくて」
笹本は一回り小さいお盆のまま買い替えもせずに練習してきた。大きければ大きいほど返すのが大変になるのではと考えたからだ。
「じゃあいきます」
笹本は息をふうっと吐いて、くるんとお盆を返す。
「どう?」
「いやぁエロい感じに……なぁ?」
エロい感じとは何なんだ?と笹本は首を傾げ、渋澤に同意を求められた小泉へと顔を向ける。
「はい……若干見えましたね」
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