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第178話

江戸時代の武士も庶民もこんな浮世絵を楽しんだのだろうか。 春画といえば当時のエロ本というイメージが強く、あまりまともに鑑賞したこともなかったが、世界的にも有名なかの天才葛飾北斎などの春画が展示してあった。 漁師と海女が励んでいる画や、全裸の海女が蛸に襲われている元祖触手ものの画など、思わずくすっと笑ってしまうものや、不思議とほのぼのとしている画が殆どだった。 「春画ってユーモアに溢れてるんだね」 「笑い絵って呼ばれてたらしいっすよ。昔の人面白れぇな」 「うん、ふふ」 その後天守閣展望台へと移動した。室内の大きな窓は360度眺望がきくパノラマ仕様で、一面に広がる海に温泉街、連なる山々や海にぽっかり浮かぶ島々まではっきりと見ることができた。 普段見ることのない海が一望できる景色は圧巻で、笹本の心を大きく浮上させた。 この瞬間は、今夜控えている宴会のことも、その後のこともすっかり忘れることができた。 「わぁいい眺めだね。あ、僕らの乗ってきたバスがあそこに停まってる。海沿いのあの道路を走ってきたのかぁ」 「ですね。そんで俺らが泊まる旅館が多分あの辺ですよ」 「ここから見ると近そうに見えるけど結構距離あるな」 「バスだからすぐ着きますよ。笹本さん少し気分良くなりました?もしかしてバス酔いっすか?」 「あ、うん……そうだったみたい。ごめん、なんか心配かけて」 普通に渋澤と接することができるようになり、ほっとしていたら、そこへ総務のお局美咲とゆるふわ村上がやってきた。 いつも社内で制服姿の女性陣はここぞとばかりに洒落込んで、村上はイメージ通りのふんわりしたロングスカートでいつものゆるふわ加減をそのまま表した服装だったが、美咲に至ってはヒョウ柄のカットソーと普段より濃いメイクが独身肉食女子を物語っていた。 絡まれるのはごめんだとばかりに、いち早く彼女達の存在に気付いた笹本が口を開いた。 「お疲れさまです」 「あら~、随分いい景色ねぇ。あぁ、渋澤君もいたのね。ん?そちらの方は?」 ─このばばぁ……。声かけたのは僕ですけど?

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