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第181話
その後パワースポットとして有名な商売繁盛にご利益のある神社を参拝し、新鮮な海の幸を楽しめる海鮮丼を昼食にとり、午後は遊覧船で海上を遊覧し海中展望室から海を泳ぐ魚達を眺めた。
もう十分満喫できたと思えるほどの過密な観光スケジュールをこなし、夕方宿へ到着する頃には散々歩き回った体は思ったよりも草臥れていた。
しかし笹本の本番はまだこの後控えている。
こんなところでへろへろになっている場合ではなかった。
宿は和の風情に溢れた昔ながらの老舗のような風格が漂う外観ではあったが、中へ一歩足を踏み入れると明るく活気溢れる従業員の明るい雰囲気に包まれて、臆することなく一気にリラックスムードが漂った。
内装も和ではあるが意外とカジュアルで気張る必要のなさを提供されているように感じた。
宿のロビーで研修で別行動だった小泉とも合流できた。
「笹本さん!渋澤さん!」
「小泉、お疲れ!」
「おーす」
「観光どうでした?」
「お城見て神社行って船乗って、スケジュール無理に詰め込んだ感じだったよ。行ったことのない所ばかりだったから楽しかったけど、ちょっと疲れた。小泉は?研修大変だったろ。お疲れ様」
「ありがとうございます。研修の手伝い自体は別に大変じゃなかったんですが……」
「……?」
小泉の視線がちらりと後方へと流れ、そちらを見てほしいと暗に示す。
笹本がそちらへ目を向けた。
そこには宿泊先は違えど、宴会に参加する店舗勤務の若い女性従業員達の姿が見える。
彼女達がちらちらとこちらを見ている。
「え、どうした?どういうこと?」
「なんだよ自慢かよ小泉」
渋澤もそちらへ目を向けて言った。
笹本にはわからなかったが渋澤は小泉の思考を汲み取ったようだった。
「違いますよ!わかるでしょ!……俺今そういう気分じゃないんです。だから俺のことを詮索されるのも連絡先の交換も迷惑で困ってるんですよ~」
「ははは、ウケる」
「笑い事じゃないですって!」
小泉はぎゅっと眉間に皺を寄せ、小声で泣き言を言っている。
それを聞いて笹本も理解した。
現在実は傷心中の小泉が知らない女性陣からモテて困っているのだと。
気の毒だとは思うけれど、モテた記憶が全くない笹本からすれば小泉が今置かれている状況は羨ましくも思える。
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