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第183話
「なかなかに首尾は上々って感じですね」
「だな。思ったより動きも揃ってるし、小泉が派手に個人技をぶちかましてくれれば俺らの負担も減るってもんだ」
小泉と渋澤の会話に笹本もうんうんと大きく頷く。
この時笹本の頭の中では、この裸芸が成功を収め、大きな拍手を浴びながら宴会席へ向けて三人で一礼する姿が描かれていた。
「さーてと。宴会までどうすっかな。笹本さん風呂行く?」
「えっ、二人で行くんですか!」
露天風呂に一緒に入りたそうな二人の視線を受けて笹本は考えた。
過去にあったことを思い起こせば嫌な予感を覚えるが、まさかこの二人が多数の同僚達が泊まる温泉宿で己の煩悩に駆られた所業に走ることはまずないだろう。
そう冷静に判断したが、風呂は宴会の後に入ろうと直ぐに決めた。
「今はいいや。多分宴会芸で大汗かくだろうし。終わってからさっぱりと体を洗い流したいから」
「そうっすか。じゃあ俺もそうしよ」
「え、じゃあ俺も合わせます!」
渋澤も小泉も一様に笹本と行動を共にするつもりらしい。
不安は拭えないが、公の場だ。
むしろ一緒に入った方が一人寂しく入るよりもきっと楽しめるだろう。
風呂に入らないことを決めると、渋澤は大きく両手を上げて伸びをして座卓にあったリモコンを手にし座椅子にどかっと座り込んだ。
渋澤が手元を操作するとテレビ画面が明るくなり、パッパッと画面が切り替わる。無造作にチャンネルをあれこれ押しているようだ。
「地元のローカルテレビ、結構面白いんだよなあ」
「ああ、わかります!」
「観光地だしご当地名物の宣伝でもやってんじゃねぇか?」
「時間が時間だし、ニュースじゃないですか」
笹本も一緒になってテレビを見ていたら、地域で起きたコンビニ強盗のニュースが流れた。
「やっぱり。俺当たりですね!」
小泉がどや顔を渋澤に向け、渋澤はそれを見て「はいはい、すごいすごい」と適当に返している。
こいつらは全く緊張しない質なのだろうか。
自分はこんなにも心臓が今からばくばくと波打って吐きそうなくらい緊張しているのに。
渋澤と小泉を見ていると全く動じる様子が見られない。
全くもって立派に肝が座っている。
こんな時、マスクとメガネが欲しい。
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