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第185話
カチャカチャと食器がぶつかり合う音と共に宿の仲居達が忙しく動き回っている。
「ちょっと早かったですかね」
「だな」
「僕らも手伝った方がいいかな」
「勝手がわかんないし逆に邪魔になるんじゃないすかね」
「それもそうか」
笹本達は宴会の時間に合わせ宴会場となっている座敷へきていた。
三人とも浴衣の下には肌色のビキニと同じく太腿の位置でカットした肌色のストッキングを身に付け、外側から見ただけでは全くわからない内側が変態的な出で立ちだ。
ストッキングの締め付けが不慣れな為、笹本はそわそわと落ち着かない。
座椅子に座って裾が捲れ上がったりしたら中が見えてしまうのではないか。
だとすれば、お行儀よく正座するしかない。
─これでは足のしびれ必至……!!
笹本がそんなことを考えている隙に渋澤と小泉は宴席の下座へと移動し、がばっと股を開いて胡座をかいていた。
笹本はそれに気付き密かに溜め息を漏らした。
裸芸を披露することに心臓がばくばくと音を立てるほど緊張し、更には浴衣が捲れてしまったら中に着けているものが見えるかもと臆病になっている自分とあの二人とでは肝の座り方が全く違うのだ。
全てに置いて自分は渋澤よりも劣っていると実感する。
しかし渋澤はそんな笹本へ熱烈なアプローチを繰り返してきた。
─そうだよ……こんなことで気後れしている場合じゃない。
告白するんだろ、僕は。
笹本の視線に渋澤がすぐ気付き、渋澤が笹本に向けて手を上げる。
「笹本さーん、こっち座りましょーよ」
「うん」
笹本は刻一刻と近付く自分の出番とその先を想像し、心拍数の上がる心臓を押さえるようにして胸に手を当て、渋澤と小泉の間の席に腰を下ろした。
その後、宴会が始まるまで笹本は何をしていたのか思い出せない程の緊張感に苛まれながら宴会までの僅かな時間を過ごし、気付けば宴会場は店舗勤務の若い女性社員やアルバイト従業員、それから本社勤務の見慣れたメンバーで埋め尽くされていた。
いよいよだ。
「では皆様グラスの準備はよろしいでしょうか?乾杯!」
人事部の部長が乾杯の音頭を取り、乾杯の掛け声でグラス同士を合わせる音が鳴った。
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