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第188話

黄色い声と歓声に気圧されながらも渋澤の背中を追いかけるようにして舞台へ上がり、渋澤が舞台奥へ、真ん中に小泉が並ぶ。 笹本は舞台袖に準備しておいたお盆を3枚拾い上げ、渋澤と小泉に手渡し、小泉の隣に立った。 そんなことはないだろうとわかってはいるのに、舞台下からの視線がグサグサと自分に突き刺さっているような気がした。 だが時間は止まってはくれない。 その後3人揃って軽く一礼すると、舞台に設置されているスピーカーから怪しげなBGMが流れ始めた。 小泉か渋澤が誰かに頼んで流してもらったのだろうか、それとも上司の余計な計らいだろうか。 恐らく後者だ。渋澤も小泉も若干戸惑っているように見えた。 流れているのはピンクの照明とストリップしか連想できないお色気には定番の古いラテン音楽だ。 これには流石に小泉も渋澤も苦笑いを見せる。 しかしこれからやることは変わらない。 「せーのっ!」 小泉の掛け声でとうとう裸芸が始まった。 掛け声と同時に、予め緩く結んでいた腰紐をほどき、お盆で確実に股間を隠しながら肩を下へ落とすようにして浴衣を脱ぎ捨てる。 直に肌に触れる空気の感覚が、夢じゃないと告げている。 笹本の緊張感はマックス。 汗で手のひらがぬるぬるになり、お盆を落としてしまいそうな不安に駆られる。 一方舞台下の同僚達からは、黄色い悲鳴が一際高く上がり、宴会場全体のボルテージ(特に女性陣)もマックスだとわかる。 小泉はどこをどうとってもイケメンだし、渋澤は悪人顔で細身だけれどきれいに筋肉のついてる細マッチョだし。 女性陣が大興奮するのも無理はない。 ─そうだよ。僕なんて誰も見てないよ。 改めてそう考えたら少しだけ肩の力がふっと抜けた気がした。 始めに渋澤から個人演技を披露する。 「はぁっ!!」 聞いたことのない迫力ある掛け声で気合いと本気度が窺われる。 渋澤は直立不動のままお盆を一回転、その後器用にくるくるとお盆を返しながらしゃがんで立ち上がる動作をしてみせた。 見えそうで見えない演技に客席から感心したような歓声があがる。 渋澤は片手でお盆を股関にキープしたまま反対の手を広げ一礼した。 完璧である。さすが自分が不覚にも惚れた相手だと、笹本は舞台上でも見惚れてしまった。 ぼうっとしている場合ではない。 いよいよ笹本の出番だ。

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