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第194話
笹本が今拗らせているのは、自分自身にだ。
要は己の問題なのだ。
宴会芸を失敗したから何なんだ。
お盆返しの成功とか失敗とか、そんなのただのきっかけ作りに過ぎない。
そう。一つの区切りとして、けじめとして、男だったら真摯な気持ちで渋澤に応えなければいけない。
そう思った瞬間、笹本の唇が自然と言葉を紡いだ。
「好き」
「え……?」
「僕も……渋澤の事が好きなんだ。いつからとかそういうのはもうわからないけど、今日のお盆返しが成功したら告白するんだって勝手に思ってて……結果は散々。だけど……、失敗したけど、僕は今伝えなきゃいけないって思った。だから言う」
「笹本さん……」
笹本は急に真顔になってしまった渋澤にしっかりと目線を合わせる。
「僕、渋澤のことが好きだ。だからその、つ、付き合ってほしい」
「……っ」
ハァッと渋澤が熱い吐息を吐くと同時に笹本をぎゅうっときつく抱き締めた。
「渋澤、苦しい、渋澤っ」
「あ……ごめん、けど、すげぇ嬉しくて」
腕を緩めた渋澤がにかっと笑った。
その悪人みたいな笑顔だって大好きだ。
笹本は渋澤の浴衣の合わせ部分をきゅっと握って、吸い寄せられるようにして唇を重ねた。
子供のように愛情を確認しているみたいな合わせるだけのキスだった。
渋澤の体温が感じられ、ふわふわとしてとても心地いい。
それも束の間、渋澤の熱に浮かされた視線と笹本の視線がぶつかり、触れるだけだったキスから貪り合うキスへと変わっていく。
「ふ、ん……」
噛みつくように唇を覆われ、舐められ、吸われ、激しく求愛する渋澤の舌に応えようと笹本もおずおずと舌を差し出した。
渋澤の舌がそれをねっとりと絡めとり、口内で突き合い擦れる感覚が気持ちよくて、笹本の鼻から、口から、甘く強請る声が頻りに漏れた。
「は、ん、……ん、ん」
激しいキスは下半身にその感覚を伝えてくる。
笹本の腰が独りでに動いた。
前後にゆるゆると、性器の下の会陰部を渋澤の太腿に擦り付ける。
しちゃいけないことだとも思わず、渋澤ともっと気持ちよくなりたくて。
「エロ……。笹本さんそれ誘ってますよね」
「え……?」
渋澤の視線で笹本が腰を動かしていたことに気付く。
「あ、いやっ、これは違うっ、その……」
慌てて言い訳しようにも、弁解の余地がない。
「ね、触っていい?」
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