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第196話
渋澤の手が下着の中へと潜り込もうとしたその時、「ビール買ってきましたよ~」とすぱっと襖を開ける音と小泉の声で渋澤の手がぴくりと跳ねてそこで止まった。
「あれ……もっと山奥まで行って来た方がよかったですかね……」
小泉はビールの入ったビニール袋を片手に持ち、渋澤に横抱きにされ、胸元に手を差し込まれ、浴衣の裾が捲れて白い脚を露にしている笹本を赤面しながら凝視している。
「いや、これはその、マッサージだよマッサージ」
こんなの苦し紛れの言い分けだ。
どこからどう見たっていちゃいちゃしながらこれからエロいことしますって体勢だろう。
気まずい空気が流れる。
居たたまれないというのは正にこういう状況だ。
─これはどう考えても……。
頭が段々冷えてきて、固まる小泉が気の毒になり笹本は正直に謝ることにした。
「何て言うかご察しのとおりだけど……時と場合と場所を考えなくちゃいけないよな。ごめん小泉」
謝ってすぐ渋澤の膝の上から即座に立ち上がろうとしたが、ぐいっと腰を渋澤に捕まれ引き戻される。
「謝んなくていいです。つーか小泉お前ほんっとタイミングがくそ過ぎる。空気読め!!」
「俺が悪いんですか。ていうか俺だってまだ笹本さんのこと……、くそっ、飲んでやる!みんなの分買ってきたけど俺一人で飲んでやる~っ!」
小泉は買ってきたビールを袋から出して何の躊躇いもなくプルタブを押し上げ、そのままごくごくと美味しそうな音を立てながら飲み始めた。
やけになって飲んでいるにしては、表情が柔らかくいい飲みっぷりだ。
そんな小泉に対する申し訳なさと可愛い後輩に対しての愛しさが込み上げてくる。
「ふっ、ふふっ……、僕らも飲もう、渋澤」
小泉がビールを煽っている隙に、笹本が笑いながら渋澤のきれいなおでこに唇を押し当て、するりとそこから抜け出した。
「チッ。ま、しょーがねぇか」
不機嫌丸出しで「俺の分まで飲むなよ小泉っ!」と渋澤も参戦する。
モブ3人衆(脱モブ1人含む)の宴は朝方まで続いた。
翌朝3人揃って二日酔いに苦しんだことは言うまでもない。
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