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第198話

テレビに目を戻すが男は既に血を流して倒れている。 男が刺された瞬間を見逃してしまった。 女がどんな表情でそうしたのだろうかと確認したくて足元に転がっているリモコンに手を伸ばす。 「もう、大事なとこ見逃したじゃないか」 「そんなに重要なとこですかね」 「僕は気になる」 ポチとボタンを押して巻き戻す。 その瞬間、渋澤の顔が近付いて、横から頬にキスされた。 「俺はこっちの方が気になるな」 笹本は反射的にキスされた頬をぱっと押さえる。 「え、なにっ?今そういう感じじゃないよね!?」 「いや、俺はそういう感じです」 「そういうってどういう……」 「だから笹本さんとエロいことしたいなって。願わくば最後までシたいなぁと」 「い、今……?」 「はい、今」 この男は一体どういう思考回路をしているのだろうか。 前から思っていたが、理解できない。 でも、どういう訳か好きになってしまった。 ─謎だよな……。 DVDを巻き戻したままいつの間にかオープニング画面になってしまったテレビをぼうっと眺めながら笹本は思った。 「笹本さん……」 横から腰に手を回され、耳元で名前を囁かれる。 それだけで、ぞわりと情欲の緩火が体に灯った。 もう映画なんて後で見ればいいじゃないかともう一人の自分が頭の片隅で笹本を唆す。 「シたら、渋澤のこと……もっとわかる?」 「俺のこと知りたいの?なんで?」 「お前が宇宙人だからだよ」 セックスしてみたらわかるかも、だなんて只の言い訳だ。 どうしてその考えに行き着いたのかは、単純に渋澤にくっつきたかったからに他ならない。 それにもっと、もっと、渋澤のことが知りたい。 「俺ももっともっと笹本さんのこと知りたいですよ。見たことのない笹本さんの顔、見せてほしい」 甘く強請られると頭の中が溶け始め、求められるがまま唇を重ねた。 いつしか以前よりずっと渋澤を受け入れたいという気持ちが強くなり、笹本は小さく口を開け自ら舌を出す。 渋澤が凶悪に色気を孕んだ顔で笹本を見詰め、笹本が僅かに出した舌はすぐにぱくりと渋澤に飲まれた。 「ん……んぅ」 甘く吸われ、粘膜が擦れ合う。 弾力があるけど柔らかくて何より気持ちよくて、笹本は渋澤のシャツの袖をぎゅっと掴んだ。 貪欲に渋澤の舌を追い掛けて、笹本は渋澤の膝の上に乗り上げる。

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