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第7話
部屋へ入り、洗面台へと向かう。
笹本はそこで暑苦しい眼鏡とマスクを外すのだ。
黒縁の伊達メガネ、顔の2/3を覆うマスク。
外した瞬間鏡の中に現れる、幼さの残る子供みたいな頼りない笹本の顔。
笹本は自分のこの顔が嫌いだった。
シャワーを浴びて夜食の支度に取り掛かる。
作り置きの総菜を冷蔵庫から取り出してレンジで加熱する。この日は小松菜の炒め物。
その傍らコンビニで買ってきた塩辛やたこわさを小さな器に移し、買い置きしてある韓国のりをシンク下の引き出しから取り出した。
全てをローテーブルに並べ晩酌の準備が整ったところで、宅配レンタルのDVDを再生デッキにセットする。
DVDの中身は『変わらぬ日々に祝福を』というタイトルの邦画だ。
生きているということが奇跡──。というキャッチコピーに惹かれて借りた人間ドラマを描いたものだった。
洋画でも邦画でもなんでもいい。ジャンルはホラー以外だったら何でも見る。
自宅での映画鑑賞は笹本の数少ない趣味の一つだった。
繰り返す日々を穏やかに過ごすことは笹本の心を安らかに保ってくれる。
ぱっとしないが、こんな毎日も悪くない。
─4月。
部署は違うが同じフロアにある人事部に新卒の新入社員が入り、早々に歓送迎会が開かれた。
笹本の所属する総務部では寿退社で女性社員が一人辞め、もちろん彼女の送迎会兼ねてのものだった。
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