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第8話
開催場所は会社近くの居酒屋。
学生達で埋め尽くされるようなチェーン店ではなく個人経営の割と小ぢんまりとした居酒屋だ。
学生や若者が多いと、ざわざわと賑やかすぎて同席者の声すら聞こえない事も多々あり無駄にエネルギーを消費する。
酒は嫌いじゃないし、飲み会自体もそんなに嫌いじゃない。
しっとりとした雰囲気まではいかないまでも、大人の飲みができる場での飲み会開催は笹本にとっても非常に有難いことだった。
笹本はビールの入ったグラスを片手に、人事部期待の新人、小泉へと目を向ける。
好感の持てる爽やかな笑顔。
年下を感じさせない肩幅と胸の厚み。
溢れ出ているリア充感。
絶対モテるだろうなと、笹本の直感が言っている。
小泉の属性はイケメン。いやそれだけじゃない。
夏は海で波に乗り、秋はハロウィンパーティー、クリスマスはもちろん恋人とラブラブなイヴを過ごし、年越しにはカウントダウンパーティー……あらゆる行事をこなすパリピというやつではないだろうか?
イケメンパリピ属性だろう。
それにしても格好いい。
そう思ってしまうのは自分にないものを持っている小泉に無意識に憧れてしまうからだろう。
笹本はビールをごくっと飲みながら明らかに自分とは違うパリピなイケメン小泉を眺める。
笹本の隣では、寿退社の女性社員が三咲から質問攻めに合っている。
旦那さんとの馴れ初めやら、プロポーズはどこでどっちからだとか、酒の勢いもあってか根掘り葉掘り聞く三咲の様子は妖怪お局と化していた。
笹本は小泉を観察しながら三咲達の話も耳に入れ、時折相槌を打って適当に飲みの席を過ごしていた。
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