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第11話

「いいから!」 とっとと入れっつうのと言わんばかりに笹本は渋澤の襟元へ手を伸ばし、ぎゅむっと掴んで個室の中へと引き摺り込む。 おっとっと……と前のめりになりながら中へ入ったところで目の前にいる渋澤の体を避けながら個室の鍵を施錠した。 「えー……なんですか」 笹本は渋澤を見上げる。伊達眼鏡の下にある笹本の眼は怒りで燃えていた。 「なんですかじゃないよ。心当たりはないのか?胸に手を当ててよく考えて!」 渋澤が言われた通りに胸に手を当て首を傾げ、考えている素振りを見せる。 「心当たりぃ?……っていうかこのシチュエーションはかなりドキドキするんですけど」 渋澤の顔がだらしなく緩んでいる。 どうしてこの状況でそんな顔ができるのかコイツの神経を疑ってしまう。 若干照れた笑いを見せる渋澤に、笹本の怒りは増すばかりだった。 「それは僕が怒ってるから怖くてドキドキしてるんだろ!いい機会だからはっきり言わせてもらうけど、君さ、日頃から僕に失礼な態度取りすぎだよ」 「そうですか?普通だと思うんですけど」 渋澤は何のことだかわからないといった顔をしてみせる。 本気でわからないのかそれともわかっていて態と舐めた態度に出ているのかわからないが、ぶつんっ……と笹本の堪忍袋の緒が切れた。 もう我慢ならない!

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