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第12話

笹本はマスクを外し、はっきりと聞こえるように渋澤の胸ぐらを掴んでこっちへ引き寄せ、更に自分からも渋澤へ顔を寄せる。 眼鏡越しにキッと渋澤を睨み付けた。 「あのなぁ!お前は毎日毎日然り気無く僕の仕事を邪魔してるの自覚ある!?この間だって脚立をぐらぐら揺らしたり、子供じゃあるまいしやっていいこと悪いことくらいの区別はつくよな!?僕を殺す気か!?僕はお前に絡まれ多大な迷惑を被っているんだ!さっきだって僕のまったりとした酒の席を邪魔された!お前に唐揚げ食べさせられて、何が「あーん」だ!何が悲しくてお前に餌付けされなきゃならんの!?とにかく!お前が絡むこと全てが迷惑!」 すぅっと足りなくなった酸素を補充し、はぁっと息を吐き出す。 一息にいつもの倍の声量で捲し立てた。 どれだけ日頃目立たない笹本でも、これだけの怒りをぶつければ、渋澤に伝わる筈だと思っていた。 目の前の渋澤は驚きに目を見開いている。 これで先輩としての威厳を示すことができただろう。 笹本の表情が「どや」と言っていた。 「わかった?」 「はいまぁ。何か俺が行き過ぎたことしてたのかなってのはわかりました。けどすいません、ちょっともう限界」 「え……」 限界という言葉と、この場所が連想ゲームのように繋がり、もしかして渋澤は催しているのかと想像した。 目の前で漏らされても困るぞと笹本がこの場を譲ろうと足を動かした途端、渋澤に両腕をがっちり掴まれた。 「ひぇ……なに?」 ひょろい渋澤の意外な腕力に内心ビビる。

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