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第13話
「な、な、何……んむっ」
─え……?何が起きてるんだ……?
いつの間にか笹本と渋澤の唇が重なっていた。
現実に起きていることを理解できず暫く放心状態に陥った。
─僕、キスされてるの……?
「んっ、んむーっ!!!」
飛び出した魂が舞い戻ってきたかのように笹本はハッと我に返った。
掴んでいた渋澤の胸倉を離し、その手で奴の胸を突っ撥ねる。
唇が離れる間際べろっと唇全体を舐められて、ぞくっと背中を悪寒のようなものが駆け上った。
これは一体何がどうしてこうなったのだろう。
全然意味がわからない。
これはいつもの地味な嫌がらせなのだろうか。
次第にわなわなと手が震えて、笹本は反射的に再び渋澤の胸倉を掴みあげ自分の方へと引っ張った。
「……僕言ったよね?迷惑行為をやめろって」
どう考えても嫌がらせとしか思えない。そうでなければ男同士でこんなこと、普通じゃない!
「すいません。……けど、ちょっともう無理です。人前でマスク外しちゃダメですよ笹本さん」
「え、は?マスク?」
渋澤との会話がちぐはぐで噛み合わず、笹本の怒りがいつの間にか削がれていく。
「そう。マスク。マスクも眼鏡も他の人の前で外しちゃダメですよ。その顔を見せちゃいけない」
「え……」
一体どういう意味だ?不細工なお前がマスクと眼鏡を外したら周りの迷惑になるとでも言いたいのだろうか……。
思いつく限りではそれしか……。
……。
沸々と新たな怒りが湧いてくる。
─なんて失礼な奴なんだ!!
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