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第14話

「っていうか笹本さんって男もイけますよね?」 「は、はぁっ?男?イけるって何のこ……、あ、僕は、ほ、ホモじゃないぞ!」 またもや渋澤の新たなぶっこみ的発言で笹本の思考が明後日方向へと流される。 キスされたことの怒りは頭の隅へと追いやられた。 ヘラヘラしていた渋澤は、いつの間にか意地の悪い顔つきで笹本をじっと見ている。 「いやぁ自覚がないだけでイける口でしょ」 「何を根拠にそんなことっ」 「だって、ずっと見てましたよね」 「な、何をッ?」 「人事の新入社員」 「え……、はぁっ!?そんなの皆見てただろっ」 疚しいことは何もない筈なのだが、冷たい水でも浴びせられたみたいに背筋が凍る。 「視線の種類が違うんだよな……。そういうのは見てればわかる」 「ちっ、違う!僕はそんなんじゃない!」 違うのならば落ち着いて反論すればいいものの、どうしてかムキになって慌てながら、掴んだ渋澤の胸元をゆさゆさ揺すった。 同時にトイレの扉がガタガタと音を立てて揺れる。 「ちょっと落ち着いて笹本さん。別にそれが悪いとか責めるつもりは……」 渋澤が笹本を宥めようとしたその時、コンコン──と2人が籠っていたトイレの扉がノックされた。 「……ひっ!」 誰かがこの扉の向こうにいる。 ここは個室。催したのならば大。もしくはリバース。早々に出なければ相手だって迷惑だ。

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