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第15話

─ここで僕と渋澤が一緒に出て行ったら不自然じゃないか?それこそホモだと思われる!? どこをどう取り繕えばこの状態を誤魔化せるのかと口をぱくぱくさせながら半ば混乱に陥った笹本を尻目に、渋澤は一つ溜息を吐いて「出ましょ」と言って鍵を開けた。 「お……小泉くん。飲んでる~?」 「……っ!!」 渋澤がへらへらと声をかけた個室の前にいた人物は会話の中に出てきた人事部の新入社員そのものだった。 話しを聞かれてはいなかっただろうか。 もし聞かれていたとしたらどこからどこまで? ドッドッドッと心臓が大きく脈打つ。 「あ、はい。酒もつまみもなかなか美味くていい店ですね」 「だよね。じゃ、ごゆっくり!」 笹本は渋澤の背中にぴたりと隠れるようにして個室を出た。 小泉の意識が渋澤へ向かっている今、モブ度の高い自分に気付くことはない。 笹本はそう踏んだのだが、擦れ違いざまちらりと小泉を確認すると、小泉は笹本をしっかりと見ていた。 ─気付かれてる……! 「あっ、あのっ、別に僕とこいつは変な関係とかじゃないからっ!えっと、そう!僕がちょっと気持ち悪くなって背中をこいつにさすってもらってただけで……」 しどろもどろになりながら慌てて言い訳する笹本を、小泉はきょとんとした表情で見ている。 もしかして小泉は何も知らないのでは。 自分一人で焦って慌てて空回りしているとすれば小泉の表情も納得できる。 どっちなんだろう。

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