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第17話

「同じのおかわりぃ……っ」 「おいおい笹本さん、飲み過ぎだってば」 「るっさい。……お前が変なこと言うか、らぁ」 笹本は空いたグラスをダンダンとテーブルにぶつけながら、体をぐらぐらと揺らしている。 完全に酔っぱらいだ。 「えー、この子こんなに酔っ払うの?こんな泥酔しちゃって帰りは誰が世話すんのよ~」 「あぁいやだ」と言いながら美咲が顔をしかめて笹本を見ている。 こっちだって美咲の世話になるなんて死んでもごめんだ。 ゆるふわ女子の村上も「やだぁ」と言って引いているのがわかった。 そんなに自分を見ないでほしい。 今までだって、誰も自分に関心を示さなかったじゃないか。 ちょっと酔っ払ったくらいで、どうしてそんなにこっちを見るんだ。 笹本は確かにかなり酔っていたがまだこの時点での記憶はあった。 その後間もなく歓送迎会はお開きとなり、笹本の知らぬ間に会計も済んで二次会へ行くメンバーとはそこで別れた。 「じゃお疲れ様ーっす」 「悪いね渋澤ぁ。うちの笹本お願いねぇ~!」 「お願いして大丈夫?」 「はぁ。まぁなんとか」 総務部長が渋澤に「悪いね」と片手をあげた。 笹本が酔いつぶれるなんて珍しいことがおきてしまったせいで、いつもは更に関心を寄せない渋澤の所属する経理部のメンバーまでもが笹本を気にかけていた。 この時笹本は渋澤の背中におぶわれていた。意識はお花畑。そう、夢の中だった。

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