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第19話

「うるせぇな……」 「……ひっ」 もぞもぞと渋澤が隣で蠢く。 ─どうしよう……。 この状況を説明してもらわないといけないのは至極当然のことだけれど、喉に何かが貼りついたように声が出ない。 こんな時に小心者を発揮してどうするんだと自分を叱咤したくなるが、何が起きてこうなったのか真実を確かめるのが正直怖い。 どうすべきか考えていたら、渋澤の手が伸びてきて再び布団の中へと引っ張られた。 「あっ」 ひょろいくせに腕力は強く、笹本の身体はあっと言う間に横に倒される。 渋澤の手が笹本の腹と腰をがっちり掴んで離さない。 「しっ、渋澤っ」 「んー……」 渋澤は寝ぼけているのだろうか。 微かな唸り声を上げまた静かになった。 笹本は有り得ない状況に身体が動かせなかった。 渋澤が寝ているのか起きているのかもわからず、状況を確かめるために息を殺した。 すると耳元ですぅすぅと規則正しい寝息が聞こえた。 ─寝てる……んだよな。 はぁっと止めていた息を吐き出し呼吸を再開する。 渋澤が寝ているとわかり緊張の糸が切れたように身体の力がふっと抜けた。 それにしてもやけに慣れた手つきで引き寄せられた。 もしかして抱き枕か何かと間違われてるのだろうか。 もしくは恋人と勘違いしてるのだろうか。 というか渋澤に恋人なんているのか。 じわじわと押し寄せる敗北感。 「……」 笹本はそこまで考えてどうせ自分は童貞だよと、悲しくなった。

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