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第21話

笹本は抜け出したくて腰を捩る。 すると胸にばかり集中していた意識が腰にも飛び火して嫌でもその辺りに当たる硬いものの存在に気付かされた。 「……っ」 サーッと後頭部が冷たくなった。 「めちゃくちゃ楽しいですよ。ていうか全然覚えてないんですね。可愛い、ウケる」 「ちょ、ちょっと待て!僕のお尻に当たってるのなに?」 「なにってナニですけど」 「ナニとは何……!?」 ─頼むから、違うナニでありますように……! 「見る?」 「やだっ、見たくないっ!」 笹本は体をぎゅっと丸めて抵抗した。 しかし渋澤はそれを楽しんでいるかのように背後で笑っている。 この状況は本当に一体何なんだ。 意味がわからない。 「そんなに嫌がらなくても。まぁでも笹本さんすげぇ酔っぱらってたんで記憶飛んじゃいそうな人に何かしても面白くないし、手は出してません」 「あ、当たり前だ!」 その前に全裸で密着しているこの状況をどう説明するつもり。 「で、こっからが本題なんですけど……」 「本題?」 「実は俺、笹本さんがタイプなんすよね。この小柄でぎゅっと包み込める感じとか、マスクと眼鏡外した顔なんてめちゃくちゃ可愛いって実は思ってます。仕事に対する姿勢も真面目だし、頑張ってる姿が健気っていうか」 「僕の顔が可愛いとか、目が腐ってるんじゃないのか……」 もちろん今はマスクも眼鏡もしておらず、地味な子供顔が全開だ。 自分の好きじゃない部分を可愛いなどと不本意な言葉で褒められて、急激に恥ずかしさが込み上げてくる。 体も顔もかぁっと熱くなった。 「俺には可愛く見えるんです。タイプだって言ったでしょ。それでですね、俺、笹本さんのこと好きなんですけど、俺と付き合いませんか?」

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