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第22話

付き合いませんかって。 渋澤はさらっと口にしたけれど、笹本は本当に意味が解らず暫く放心状態に陥った。 「……」 「おーい笹本さん?……無理なら友達からでもいいんですけど」 「言ってることがちょっとよくわからないんだけど」 もしかしたらこれは夢じゃないのか。 だってこんなのどう考えてもおかしい。 一度きちんと頭の中を整理しなければ。 「マジで通じてない……?」 渋澤の不安げな声。 それ以上にこっちは自分か渋澤かわからないけれど、頭がおかしくなったのではと本気で思っているというのに。 「ちょっと確認させて。昨夜は歓送迎会で飲みに行きました」 「行きましたね」 「まったり飲んでたら渋澤が隣に来て僕の口に唐揚げを押し込みました」 「押し込んだわけじゃないですけど……まぁ食べさせました」 「その後僕がぶち切れて渋澤をトイレに連れていきました。個室で説教しました」 「確かに」 「そんで……人事の新人をそういう、何て言うか、イヤらしい目で見てるって渋澤に言いがかりをつけられてキスされました」 「笹本さんの唇小さくて柔らかかったです」 渋澤とのキスの記憶はやはり現実。 笹本の心の中はくそという言葉でいっぱいになる。 「……そしたら当の小泉君がトイレの扉を叩きました」 「そうそう。なんつうタイミングで現れるんだって思いましたよね~」 それは渋澤が勝手に小泉を話題に出したからあんなに焦ることになったのではないか。 他人事のように言いやがって、と笹本はぎゅっと眉間にシワを寄せた。 「そんで席に戻って……?」 だめだ。そこからの記憶がすっぽりと抜け落ちている。 「……」 沈黙が続き、渋澤が続きを語り始めた。

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