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第33話 ロミジュリからのケツ揉みしだき
まるで、ロミオとジュリエットみてぇ。
柄にもなくそんなことを思った。
「か、和臣っ?」
「シーっ、見つかったらヤバイ」
「……」
走りたいけれど、月明かりしか足元を照らしてくれない中じゃ走れなくて。もどかしさが滲む早歩きで、手を繋いで、木々を抜けていく。途中、何度か足で踏んで折った小枝の音にすら、ちょっとドキドキでさ。
恋に焦れて、どうしても会いたくて、夜の闇に紛れて手を繋ぐ、触られたことに胸を高鳴らせ、さらわれたことに気持ちを弾ませて、恋の温度が上がる――みたいな。
そんなことを思ってたなんて知ったら、和臣は笑うかな。乙女かよって。でもさ、ロマンチックすぎて、心臓がやばいんだ。
「あと少し。俺の部屋」
「……なんで、返信しねぇんだよ」
ずっと会いたかったんだぞ。会いたいけどいるわけねぇって思ってたから、たくさん近状報告したのに、ひとつも返信寄越さないで、何してんだって、ずーっと上の空になっちまっただろうが。
「ここ。隣があんまり離れてないから、静かに」
案内されたのは俺と仰木が使っている部屋よりも少し小さい一人用のコテージだった。
「ふぅ……」
部屋に入ってようやく息を飲むような緊張感が解けて、大きな溜め息にも似た深呼吸をする。
「返信しなかったんじゃなくて、できなかったんだ。講師陣に捕まってて。本来は豪田が来るはずだったから」
「あ! そうじゃん! 和臣にいる建築ってたしか!」
そうだった。豪田がいるはずなんだ。
「代わってもらった。そんで、代わってもらったせいで、すげぇ後輩思いのやる気のある奴って思われて、講師陣に捕まりっぱなしだったんだよ。キャンプファイヤーで剣斗に声をかけられるかなって思ったんだけど、そん時も捕まってたし。ようやく解放されたんだ」
科が全部一緒になるキャンプファイヤーの時、俺は端のところでしょんぼりしてた。それ以外はずっと科ごとに分かれての行動だったから。男ばっかの科もあるし、小学生じゃないから、逆に問題にならないようにってことだろうけど。部屋も少人数用のコテージを借りてるから。んで、先輩方だけは一人部屋を割り当てられてた。
「なんで、ここ来る前に教えてくれなかったんだよ」
「……さすがに、べったりすぎて引かれるかもって思った。それに、お前は心配ないって言い張ってたし。口うるさい彼氏だなって思われたくないっていう、心の葛藤ってやつ?」
和臣がクスッと笑って、いつもカッコいいヘアースタイルにしてあるのに、手でくしゃくしゃにかきあげてしまった。その耳が少しだけ赤く見えるけれど、それが照れなのか、それともここまで獣道を手を引きながら歩いたせいなのかは、わかんない。
わかんないけど、和臣だ。
「もしかしたら、押し倒されてたかも」
「は?」
「やめてーっつってんのに、ベッドで羽交い締めにされて、襲われてたかも」
「おい、剣斗」
「だから、もっと心配して、おっかけてさらって」
どうしよ。これ、めちゃくちゃ嬉しい。
「襲われねぇよ。そんな簡単に俺のことどうこうできるわけねぇじゃん」
この人、俺のことさらいに来てくれたんだって。
たまらなくくすぐったくて、和臣の服を指でちょんと摘んで引っ張りながら、自分からも近づいた。
「俺のこと、好きにしていいの、彼氏だけなんで」
「……」
「んっ……ふっ、ン、ん」
見上げるとキスが待ってた。舌入れられて、まさぐられて、絡まり合って、ぴちゃぴちゃと濡れた音がする、そんな濃厚キス。
「あ、和臣っ……」
舌先同士でくすぐり合って、そんで、そのまましゃぶり付かれて、じゅる、なんて卑猥な音がすると、ほら……もう火照る。
「剣斗、腰、擦り寄せてる」
「ん、わざと。だって、セックスしてぇ」
和臣だって硬くしてんじゃん。
「もう?」
「もう、じゃねぇよ。ずっと、今日一日、お前のこと恋しかったんだかんな」
首に腕でしがみついて、全身をぴったりくっつけて、キスで火照った身体を、キスに反応しまくった股間を全部擦り寄せながら、またキスをした。やらしくて、エロい、誘惑キス。唇を舐めて湿らせてから、挿入の真似をしながら舌入れて、抉じ開けて、丁寧に、丁寧に和臣の下をしゃぶる。しゃぶって、上下に頭を動かしながら、硬くなった股間をズボンの上から撫でた。撫でる掌ですら気持ち良くなれる。
「なぁ、和臣」
和臣も俺の掌、気持ちイイ? こんなに身体はガチガチになるほど俺のこと欲しがってくれんじゃん。
「なんで、いっつも、一回しかセックスしねぇの?」
「……」
「この前だって、俺、たくさんしてくれっつったのに」
いつもそうだ。セックスは一日に一回しかしちゃダメなのか? 最初はさ、処女だったからそういうもんなのかもしんねぇけど。
「もお、俺、処女じゃねぇし」
「……」
「俺、すっげぇ気持ち良いよ? ホント、何回でもしたいし。もう、痛くなんてないから、ここ」
抱きしめてくれる手を取って、自分のケツを握らせた。握らせながら、重ねた上から自分で揉みしだいて。
「ン、はっ……」
それにすら感じるくらいだからさ。
「なぁ、なんで? 今日もやっぱ、一回だけしか、してくんねぇの?」
揉みながら、和臣の唇を猫みたいに舐めて甘えたおねだりをした。
「それとも、俺って、やっぱ、そこまでそそられない?」
首筋に頭を預けて、擦り寄る。全身使って、誘惑しても、まだ、ダメ?
「なんで?」
和臣のくれる「好きだよ」の言葉はいつも願いが入ってた。
「聞いたら、呆れるぞ」
ぎゅっと抱きしめられて、懐に閉じ込められて、頭上に落っこちる和臣の溜め息。なんで? 呆れるわけねぇじゃん。
「愛想つかされなかねない」
「そんなことねぇよ」
「いーや、俺自身、ビビるし。ここまで心配して追いかけて来るとかもうざい彼氏って思われるだろ。普通は。いつお前が呆れるかってヒヤヒヤしてる」
「……しねぇってば」
「……」
「しねぇって」
ぎゅっとしがみついた。離してやらないって、気持ちを込めて、これっぽっちも小さくない身体をできるだけ、和臣の腕の中に収まるように小さく縮こませて。
「絶対に、呆れな、ンっ……ぁ」
その小さくなった身体をもっとぎゅっと抱きかかえられながら、俺が掴ませたケツを撫でる手が、指が、明らかに奥の孔を服越しに撫でた。
「あ、あっ、ン……ぁ、はぁっ」
「お前、服の上からでこの反応って、これじゃ、電車にひとりで乗せるのも危険なんだけど?」
「バッカ、俺を痴漢、する、ン……ん、度胸のある奴がいたら、褒めっ、あ、や、指っ」
服越しに撫でられ、押される孔がもどかしさにまた火照る。ビクビクってするほど、感じてる。けど、これは別に。違うんだ。
「和臣だからっ、だっ、あ、ン」
完全に今すぐ欲しくなった俺は懇願の眼差しで和臣を見上げた。
「ッチ……おいで、剣斗」
そして、舌打ちされてから、腕を引かれて、洗面所のほうへと連れていかれた。
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