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第35話 我慢は身体によくないです。
「あっ、ンっ、イくっ」
「っ、剣斗」
「あっ! …………っン」
ゴム越しにドクドクって和臣が射精してるのを感じて、俺も身震いしながら、また、イった。
「あっ、ぁ……すげ……和臣」
何回目? 四回? か?
洗面所のとこでほぐされて、自分の気持ち良さそうな顔見ながら、和臣の形を感じられるようにって、ゆっくり挿れられただけで、イった。そのまま、そこでじっくり攻められ、和臣がイクを感じて、もう一回、立ったままイった。鏡プレイの立ちバック。すげぇ興奮したし、すげぇ気持ちよかった。いつもだったらそこで終わり。
けど、今夜は終わらなかった。
場所をベッドの上に変えてもう一回。今度は直に顔を見ながら。二回目があることにも、正常位で上から圧し掛かられる重さも嬉しくて、ぎゅっとしがみ付く。たくさん奥突いてもらって、その度に甘い声で啼いて、目の前でイく和臣の吐息を感じながら、二人同時に射精した。
――まだだよ。
まだビクンビクンって腰が跳ねるくらい射精直後の余韻の中にいたのに、耳元でそんなことを囁かれて、今度はバックで。
「はぁっ……ン、和臣」
それが今、イった四回目。
「ン、ぁっ……あっ」
まだ、和臣は中にいる。ケツンとこ、ジンジンする。熱くて、たまらない。こんなに?
「和臣、ぃ」
こんなに我慢してたのかよ。だって、まだ、俺の中にいる和臣は硬いまんまだ。
「あっ……」
その硬いままの和臣のペニスが抜かれるだけでも身震いした。
無意識に何かを掴もうとベッドの上へと手を伸ばす。その手に和臣の手が重なって、捕まって、身体をひっくり返された。指を絡め合って、手を恋人らしくしっかり繋いで、視線も唇も重なって、鼓動だって同じリズムで一緒くたになりそう。繋がってた場所だって、ローションとか、俺のイッた液とかで、もうびしょ濡れで、きっとひどい有様だ。
「これ、どうした?」
腕のとこにある赤い傷。血も滲まないくらいに浅くて、薪の逆立ったところが皮膚を引っ掻いた時だけは痛かったけど、別に、今は、そんな傷なんともなかった。
「あっ! ンっ……薪で」
「……痛そう」
それなのに、その傷にキスされただけで、身体がビクンって、派手に反応した。イきまくって、感度が振り切れてる今の俺には、そんな赤いミミズバレを舐められただけで、たまらない刺激にしかならなくて。
痛くて、気持ち良くてさ。
「あっ、はぁっ……ン」
孔がまだ中にいる和臣のペニスに、やたらとしゃぶりつく。
「あっン、乳首、も、バカになる」
キスが腕から胸に移って、散々舐めて摘んで抓られた乳首は歯の先が先端を擦るだけでも、敏感に反応した。
「な、ぁっ……ダメ、だって、乳首、ホント、敏感にっ」
「もう敏感だろ? ここ」
「っ」
「いじりながらだと、きゅんきゅんって、中がもっとエロくなる」
「え、ぁ、ちょ、も、俺、出ない」
にっこりと爽やかな今風大学生っぽく笑ってた。
「そ? 俺は、まだ出るよ」
「!」
だって、俺、和臣より一回多くイってるし。
「我慢、しなくていいんだろ?」
「そ、だけど」
「なら、付き合って」
ベッドがギシッと軋んだ。きっと、重いっていう苦情が混ざってると思う。今の感じの軋み方は。男ふたりで激しくセックスするのも二回まではいいけど、でも三回目はちょっとしんどいかなぁっていう思いを込めての「ギシ……」だったって。
「あと、もうちょっとね」
「あ、ン、ダメ、だって、俺、ぁ、だから、ン……ん……ンっ」
ホント、バカになりそうだけど、でも。
「ン……ぁ、和臣……」
このキスは反則だ。戸惑う唇をゆっくり丁寧に唇と舌で開かせて、優しく舌先をイイコイイコしてくれるようなキスは、俺の好きなご褒美と同じ柔らかさだから。こんなんされたら、蕩けるに決まってるだろ。
「ぁ、もっと、いいよ。して……かず、おみ……中も」
俺だけの先生がくれる「イイコイイコ」がすげぇ、好き。
「お前がそんなんだから、止められなくなるんだろ」
「ン、欲しい……かず」
ぎゅっと抱きついて舌を伸ばして、キスをしながら、奥深くまでご褒美が欲しくて大胆に脚を広げた。
「センセー、俺、明日の朝……って、もう今日の朝だけど、歩ける気がしませーん」
「ぐっ」
ドロドロになって混ざり合いそうなくらいに濃厚なセックス後の風呂上り。ベッドの上で俺だけの先生が金髪をブローしてくれてた。ちょっとこの時間じゃうるさいかもしんねぇけど、コテージでそれぞれ離れてるから、まぁ、大丈夫かなって。
クスクス笑いながら、いっぱいセックスしてくれた彼氏のほうへと座り直して見上げると、ほっぺたんとこを赤くして困った顔をしてた。
今日はズボンも下着も着用しなさいだってよ。ワガママだろ? 今日は、タガが外れてるから、刺激的な格好はこれ以上しないようにって。一睡もできなくなるからって。
服は、和臣が俺の泊まることになってる部屋まで取りに行ってくれた。仰木が目玉飛び出そうなくらいびっくりしてたって。そんで、思いっきり、すっげぇでかい舌打ちをされて、鞄を押し付けられたって。
ごめんな。仰木。
でも、俺は、和臣が好きなんだ。
「っつうか、今も腰砕けで、全然無理です。センセー」
「お前なぁっ、その先生ってたまに使うタイミングがっ、……」
この人のことだけが、マジで、すげぇ、好き。
引き寄せて、衝突するようなキスをして、目を丸くする和臣も思わず笑みが零れる。
いつでもどこでもキスしたくなるくらい、和臣が好き。
「いっぱいしてくれたの、嬉しかった」
「……」
和臣とイチャついてると世界一幸せだって思えるんだ。
「なぁ、和臣、次、ヤル時も、我慢すんなよ」
「……」
「俺のこと、たんまり、襲っていいよ」
「……」
「和臣だけは、俺のこと、好きにして?」
髪を乾かしていたドライヤーがオフになって、騒々しかった部屋が一気に静かになる。乾かしたては、ほんの少しだけまだ水分を含んでるから、なんとなく柔らかくて気持ちイイ。そんな俺の髪をブラシの代わりに和臣の指先がすいて整えてくれた。
その指先にほだされて、頭を預けるように甘えたな猫みたいにすり寄せ目を閉じる。
「だから、好きにしたら、お前、一睡もできないでしょうが」
「……ン」
目を閉じてもわかる、キスしてくれるって。甘くしっとりと重なるキス。
「いいのに……」
「ダメ。ほら、寝るぞ」
抱き締めてられて、包まれる。ほんのりと感じられる体温は、さっきまでみたいに溶けてドロドロになりそうな熱くて激しいものじゃなくて、もっと優しくて柔らかくほぐれる人肌体温だった。
それはすごく幸せな場所すぎて、いつまでだってここにいたくて、寝過ごすくらい。
「あー……そうなんです。足首ひねったらしくて、痛くて歩けなくて。治療してもらいました」
痛いのは腰だけど。歩きづらいにほどジンジンするのはケツだけど。
朝、しっかり寝坊した俺たちは誰にも見つからずに部屋を出るなんてことはできるわけがなく、怪我をしたフリという厳しい言い訳しか思いつかなくて、ふたりでずっとヘラヘラ笑ってた。
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