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第66話 百より一

 好きで、好きで好きで好きで、なぁ、どうしたら全部伝えられる?  いっぱいセックスしたら伝わる? キス百万回とかしたらいいのか? 何をしたら、この気持ち丸ごと和臣に見せられる?  帰ってきてすぐ抱き付いて、抱き締められて、そのままベッドに転がった。いきなり二人分の重みを受け止めたベッドが驚いたように音を立てたけど、その音にすら恋しそうなくらい、今、全部が愛おしい。 「ン、和臣……」  服を脱がせるのももどかしくて、Tシャツを脱いだ和臣に飛びついた。笑われて、頭を撫でられて、目が合うだけで、ほら、もっと好きになる。 「剣斗」 「ン」  だから跨って、キスをした。唇に触れて、重ねて。 「ン、ふ」  そのまま舌をお互いのに絡みつかせて、繋がる深いキスになる。ベロの柔らかさと濡れた感触にゾクゾクしながら、裸の和臣を抱き締めて、口を開いて、ディープキスをねだる。角度を変えて、何度も何度もキスをして、濡れた唇と敏感になった舌で首筋、鎖骨、胸、腹にもキスをした。少しだけ舌を出して舐めれば、俺の頭を撫でてくれる指先が気持ち良さそうに、ピクンって反応してくれる。  いっぱい俺が気持ち良くしてやりたいんだ。 「剣斗」  掠れた声で名前を呼ばれて、上目遣いで見上げながら、ズボンの前をくつろげた。  なんでもしたい。和臣のこと、蕩けるまで気持ち良くさせたくて、下着を引っ張り下ろしてすぐに飛び出た、それに丁寧に舌を這わせて、しゃぶりつく。  なぁ、俺に和臣のことたくさん愛させて。たくさん、俺で気持ち良くなって。そんで、俺のこと、もっと好きになって。 「ん……ン、ん」  歯を立てないように、和臣がいつもしてくれるみたいにたくさんやらしく舌を絡ませて。 「剣、斗」 「ン」  硬くて熱い和臣の――フェラしてるのは俺なのに。 「ン、ん」  なんで、俺も気持ちイイんだろ。このまま、舐めてるだけで、イけそうなくらい、ベロが気持ちイイ。 「剣斗、額のとこ、真っ赤だぞ。それ、痛くない? 頭突きってさ」 「……、ン」  口を離して、伝う唾液を手の甲で拭った。 「いてぇよ。すげぇ……」 「それなら」 「だから、頭突きにすんだ」 「……」  デコが真っ赤とか色気半減、いや、ほぼゼロになりそうだから、萎えられたら嫌で前髪で隠した。セットしたのなんて、和臣のことを探して走り回ってた頃からもうボロボロだ。 「これなら、やられたほうも、やったほうもイテぇじゃん」 「……剣斗」  和臣にも一発食らわせたことがあったっけ。これ。俺の好きを疑って、また痛い思いをするかもしれないとビビった和臣に食らわせた。これ以上痛いことなんてねぇから、もうビビるなっていうために。 「イテテ」  触るとあの時以上に痛かった。そりゃ、そうか。今回は相手がラスボスだったんだ。手加減なんてしてたらこっちがやられるだろ。だから思いっきりやった。 「俺も痛くねぇとさ……」 「……」 「これでおあいこだ。あの人にビビって悩みまくるグズな俺にも良い一撃」  照れて笑った。 「ちょっと、デコが赤くて、ダセぇけっ、うわっ……おいっ和臣、今、フェ……ン」  額が見えないようにもう一度前髪へ手を伸ばしたところを和臣に捕まって、そのまま押し倒された。フェラしながら気持ち良くなってた口の中を、キスでいい子いい子されると更にたまらなくて、俺が蕩ける。 「……ン」 「剣斗のそういう優しいとこ、好きだよ」 「和、っン……」  組み敷かれて、奪うようにまたキスされて、クラクラする。 「フェラして、俺のことを良くしてくれようとする剣斗も可愛くていいんだけど……」  見つめられて、微笑まれて、ドキドキする。 「やっぱり、剣斗のことを俺が可愛がりたい」 「あっ……っ」  首筋にキスマークをつけられただけで、身体の奥のとこが和臣を欲しがって、なんか、とろりと濡れたように感じた。  どうしよ、これ。 「あっ! ちょっ、和臣っ、ぁっ」  もうイきそう。 「ンっ」  乳首舐められただけで背中が弓なりにしなるくらい感じてる。感じすぎて、ヤバイ。 「こら、声抑えるなよ」 「ん、だって……」 「可愛いのに」  和臣の舌に躾けられた乳首が反応してる。可愛がられたいって、いじめられたいって、コリッコリに硬く尖って、もっと敏感になる。 「やぁぁっ」  口を手の甲で抑えてたのに、その手を掴まれて、ベッドに押し付けられながらの愛撫に身体がきゅっと力んだ。 「剣斗……」 「?」 「剣斗は、可愛いよ」 「も、そんなわけねぇだろっ、俺なんか、ひゃあ!」  乳首をきつく吸われて、歯で齧られて、びしょ濡れになるほど舐められて、気持ち良すぎる。愛撫される度に声が零れる。いつもよりも派手な喘ぎ。その声もさ、あの人に比べたら、やっぱ低くて、普通に男だ。身体だって、あんなに細くない。白くない。筋肉だってそれなりについちまってる。 「知らないのはお前だけだ」 「ン、そんなわけっ」 「覚えておくように」 「んんんっ」  性感帯になった乳首を指の先で弾かれて、ビクンと身体が跳ねた。 「可愛いんだって」 「ン」  そんなわけない。百人いたら、百人向こうが可愛いって言うだろ。フツーに。けどさ。 「わ、かったよ」  けど、もし、百一人目に和臣がいて、俺のことを可愛いって言ってくれるなら。 「あの人よりも俺のほうが可愛いんならさ」  百一人目にいた和臣だけが俺のことを可愛いって言ってくれんなら、俺は百人にどう思われたって別にいいよ。 「一番、今までの誰よりも、俺のこと、たんまり愛してよ」  欲しいのは和臣だけ。だから、俺は、まだイイコイイコされてない下半身を脱ぎたそうに身を捩って、甘えるように見上げた。

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