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第67話 可愛い人

 下着を脱がされて、もう反応しまくりのそこを見られて恥ずかしかったはずなのに、和臣の手で触れられると快感が勝って、恥ずかしささえ気持ちイイに変わる。甘えたくなる。もっとたくさん触られたくて、自分から身体を開いて誘ってる。 「ン、和臣、ぁ、ン……気持ちイイ」  この手に撫でられるとどこもかしこも、柔らかくなる。身体の奥も、気持ちも。この指に触られると、きゅっと縮こまって、感度を上げて悦んでるところを見せようと、硬くなる。 「ン……和臣」  和臣から全部教わったんだ。この気持ちイイもん全部、和臣が俺に教えてくれた。 「和臣、キス、したい」 「……」 「和臣?」  首にしがみついて、キスのおねだりをすれば、いつも唇を重ねて開くようにしてくれるのに。ぴたりと止まった和臣になんかあったのかと、早くキスしたいと焦れる身体を潜り込ませて覗き込んだ。 「どうかした?」 「……剣斗さ」 「あぁ」 「一応、訊くけど」  なんだよ。すげぇ微妙な顔して。 「俺以外のキスがどんなか知りたいとか。こういうことを俺以外としてみたいとか……ある?」  苦いもの食ったような、甘すぎるジュース飲み干したのような、そんな、困り顔。 「はっ、はぁぁぁぁ?」 「ある?」 「なっ、ねぇよ! そんなもん!」 「相手が女の子でも」 「何っ、バカ! ねぇってば!」 「でも、お前、ノンケだろ?」 「ねぇよ!」  あるわけねぇじゃん。そんなの心配する必要なんて、これっぽっちもないのに。バカじゃねぇの、なんでそんなこと。 「ねぇよ……」  あぁ、そっか。バカなのは、俺だ。  ぎゅっと抱き締めて、脚でもしがみ付いて、そんで、おでこをごつんって軽く、本当に軽く触れる程度に頭突きした。 「マジで、ないから」 「……剣斗?」  落ち着いた声でもう一回繰り返し言って、抱き締めた腕に力を込める。  マスターは、ノンケ恋愛対象外なんだっけか。 「俺、ノンケだからさ」  ノンケが同性と付き合ってたらそのうち女と恋愛したくなるかもしれないと不安になるのかな。もしくはそんな過去があんのかもしんねぇ。どうしたって越えられない、どうにもできない性別のことで悲しい思いをしたことが、あのマスターにはあるのかも。 「だから、こんなことしたいと思わねぇよ。普通は」  けど、俺は違うよ。 「剣、」 「和臣だけだ。こんな……」 「!」  抱きついてた手を片方だけ、俺と和臣の間に入れて、そのまま自分のそこを触った。 「ここ、触って、奥までやらしくして欲しいって思うのは」  触って欲しい場所を自分の指で広げて、はしたなくても晒して。 「俺のこんなとこを見せたいって思うのは、和臣だけ」  男だけど、抱いてくれっておねだりをしながら、そっと、その唇を啄ばんだ。 「あっ、はぁっ……ン、ン、あっ」  向かい合わせで首にしがみ付く俺を閉じ込めるように両脇で肘をついて、心臓の音も聞こえそうな近さ。 「あンっ……ぁ……あっ」  深く突き上げられる度に視界がずれても、この腕が俺を抱き締めてる。 「剣斗、きつくない?」 「ン、ヘーキ」  少し苦しいんだ。太くて熱くて硬い和臣のが突き刺さると、身体の内側が圧迫されて抉じ開けられる苦しさがたしかにある。あるけど、それが嬉しいって思う。 「だから、もっと苦しいくらいに奥、来て」  キュンって、和臣の太いのを締め付けたそこの、もっと奥のとこ。下腹部のとこ。 「あぁぁぁっンっ!」  指じゃ届かない、和臣のペニスじゃないと来れない奥にたくさん。 「な、和臣」  くちゅくちゅ聞こえる音も、和臣の乱れた呼吸も、全部、愛しい。エロくてやらしいのに、優しくて温かい。 「中に出して」 「……剣斗」 「今日は、全部、俺の中にして?」  この前も同じようなことをおねだりした。けど、その時は必死に縋るように頼んだんだ。あの人に取られたくなくて、なんでもいいから、和臣のことを閉じ込めたくて零れた懇願。 「和臣の、欲しい」  けど、今日は違う。愛しくて、恋しくて仕方ないから、欲しいんだ。好きな人の全部がただただ欲しい。キスも抱擁も、セックスも、なんもかんも俺としてして欲しい。 「一緒にイきたい。中で和臣がイくのを感じながらイきた、ぁっ……ちょ、ぁ、ンっンン」 「っ……バカ、イくとこだっただろ」 「あンっ……」  怒りながら、奥をクンとペニスで突かれて、甘い声を上げた。 「ホント、剣斗は……」 「うわ」 「……なんだよ」 「和臣、今、すげ、可愛い」  一旦呼吸を整えたいと上半身を離して距離を取って、髪をかき上げた和臣が真っ赤になって照れてた。その照れ顔が年上なのに、元遊び人だったのに、なんか、可愛かった。 「そんなわけあるか」 「ぁ、あぁっン、中っ、擦れてっ」  激しさが増した突き上げ。エロさが増した繋がった場所がたてる蜜音。存在感がすごくて、俺の中に和臣がいるってすげぇ実感できて、苦しいのに、気持ちイイ。激しくて、どうにかなりそうなのに、満たされて、ふわふわで、幸せだって思う。 「可愛いのは剣斗だ」 「あ、ンっ……やぁっン、ぁン、も、和臣」  奥に来てる。激しくて熱い和臣が俺の中で暴れてる。俺はそんな和臣にしゃぶりついて、きつく締め付けて、早くちょーだいっておねだりしまくって。 「もぉ……っ」 「剣斗」 「あ、イくっ、かずおみっ、俺、もぉ、イっちゃうっ」  和臣も俺の中を独占したいともっと激しく貫いて来てくれる。俺のこと、欲しがってくれる。 「あ、和臣っ! かずおみっ」  苦しささえも愛しくなるんだ。 「剣斗」 「あ、あぁっ」  好きな人とするセックスはなんでこんなに幸せなんだ。 「剣斗、好きだよ」 「ぁ、ぁ、んんんんんんんっ!」  なんで、こんなに気持ち良くて、涙が出るほど、幸せなんだよ。 「……剣斗」 「ン……ん」  ドクドクと内側で感じる和臣の心臓の音みたいな鼓動と、熱に、奥まで満たされながら、一番高いところまで飛んでいける気がするほどの浮遊感。俺はただぎゅっと抱きついて、愛しい人と離れたくなくて、深く甘いキスをした。

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